パラリンピックポスターに再注目 山口晃さんが問う原点

 東京五輪・パラリンピックの公式ポスターの一枚が新型コロナウイルス禍の今、改めて注目を集めている。画家、山口晃さんの「馬からやヲ射る」。東京、福島、障害者の日常を描いた作品は、開催できるか不安を抱えながら来夏へ向かう大会に問いかける。原点を忘れていまいか、と。

 「ディテール(細部)を目でみて、今年これを買ってよかったと思った」

 今秋、山口さんのポスターを買った人がSNSに投稿すると、1万超の「いいね」がついた。安倍晋三前首相の大会招致時の発言を引いた、山口さんのメッセージにも共感が集まる。

 《一番弱い者が死なずにすむために社会というのはある。そうなっていない時は為政者に文句を言い、自らも省みなければならない。人は忘れっぽい。オリパラなどは思い出す機会だ。復興五輪、アンダーコントロール(原発事故の放射能汚染は制御できている)など忘れてはいまいか》

 大会組織委員会は今年1月、公式ポスター20点を発表。今も全国各地でポスターの展示が続いている。

 その一つが山口さんのパラ向けの作品だ。大和絵と西洋絵画の手法を組み合わせ、鳥の目で描く鳥瞰(ちょうかん)図で世界的評価を得る山口さん。昨年のNHK大河ドラマ「いだてん」のオープニング映像にも作品を提供した。だが、依頼を受けたときはためらいがあった。

 「本当は五輪に関わりたくなかったし、全く興味もなかった。東京五輪の大会中は、妻と東京を離れようと思っていました」

 コンパクト五輪からほど遠く肥大化する予算、招致をめぐる贈収賄疑惑、国立競技場建設をめぐる騒動などに強い疑問を感じてきた。また、「戦争画」という形で美術が大政翼賛的な役割を果たした歴史にも思い巡らせてきたという。

「端っこから反対と言っても祭りにかき消される」

 一方で、「開催国の現状」を描…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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