ベランダで叫んだ姉の名 助かった弟「せめて2階に…」

 大きな被害をもたらした台風19号の上陸から19日で1週間になる。これまでに確認された犠牲者は80人。残された人たちの脳裏には、いまも生前の姿が鮮明に残る。

 千曲(ちくま)川の堤防が決壊し、水が流れ込んだ長野市赤沼。徳永初美(はつみ)さん(69)は15日朝、自宅近くで倒れているのが見つかり、死亡が確認された。「せめて2階に上がってくれていたら」。2人で暮らしていた弟の宏さん(61)は言葉を絞り出した。

 宏さんは13日未明に帰宅した。雨は小降りだった。1階の初美さんの部屋の前にはスリッパがあった。「寝ているんだな」。2階の自室で床についた。

 午前6時ごろ、親族から電話で安否を尋ねられた。ベランダへ出ると、あたり一面泥水だった。敷地内にある倉庫の1階が水につかっていた。「初美!」。声は返ってこなかった。

 宏さんは午後1時半ごろ、自衛隊のヘリに救助された。一緒に助けられた近所の男性に「お前の姉ちゃん、朝、おでこまでつかって(近くの)神社に向かって泳いでいたぞ」と教えられ、驚いた。

 初美さんは若い頃、英語が得意で教員経験もあった。年を重ねても元気で、スーパーまで歩いて買い物に行った。宏さんは「なんで出て行ってしまったのか。まさかこんなことになるとは思っていなかったと思う」と肩を落とした。

 西沢孝さん(81)は14日、…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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