一人暮らしの82歳、助けを待った36時間 救ったのは元同僚の通報

近藤咲子

 倒れかかった本棚の下で身動きがとれなくなり、助けを待つこと36時間――。仙台市青葉区の男性(82)を救ったのは、安否確認の電話に出ないことを心配して男性宅を訪れた元同僚からの通報だった。

 消防などによると、18日午前11時ごろ、「男性が自宅2階の寝室に閉じ込められている。倒れかかった本棚の下にいて扉が開かない」と119番通報があった。通報者は元同僚の女性。16日深夜に発生した大規模な地震から一夜明けた17日に男性の携帯に安否確認の電話をかけたが、翌18日になっても折り返しがなく、心配になって男性宅を訪れたという。

 消防車や救急車など計5台が出動し、通報から約10分後に男性宅に到着。寝室の内開きの扉は10センチほどしか開かず、すきまから扉付近に倒れた男性の左肩が見えた。消防隊員が「大丈夫ですか」と声をかけると、小さく「うん」と返事があった。

 隊員らは寝室の窓にかけた約4メートルのはしごを登って部屋に入り、男性を救助。男性は倒れかかった本棚やステレオコンポなどの下の空間に閉じ込められ、身動きがとれなくなっていた。軽いけがをしていて病院に搬送されたが、命に別条はないという。

 救助した隊員は「発見があと少し遅かったら最悪の事態になっていたかもしれない。大事に至らなくてよかった」と話す。

 消防車のサイレンの音に、現場付近の住宅街は一時騒然となった。2軒隣に住む主婦(59)は「助けを呼ぶ声もしなくて、全く気づかなかった。まさかこんな近くで人が閉じ込められていたなんて…」と話す。

 近所の人によると、男性は一人暮らし。最近は普段の買い物も知人女性に頼み、ほとんど外出していない様子だったという。向かいに住む永田芳男さん(69)は「地震の翌日に電話したが応答がなく、心配していた。自分の家の片付けが大変で余裕がなかったが、もっと早くに気づいてあげられたらよかった」と話した。(近藤咲子)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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