不幸の裏側にある幸福 「神様のカルテ」監督が妻主演映画で描く物語

 「神様のカルテ」などのヒット作で知られる深川栄洋(よしひろ)監督(45)が、20代以来となる自主制作映画「光復」を完成させた。撮影の舞台に選んだのは、主演を務めた妻の出身地・長野。監督を含め5人のスタッフで制作した。これまでの深川監督らしい「ほっこり」とは対極にある不穏な空気に満ちた意欲作となった。

 「新境地というよりは、原点回帰。よくハートフル(な作風)などと言われるが、本来の自分は言葉にならないものを映画にするのが好き。人間とは、幸せとは何だろうと、お客さんと一緒に考える時間ができたらいいなと思った」。深川監督は言う。

深川栄洋監督

ふかがわ・よしひろ 1976年生まれ、千葉県出身。東京ビジュアルアーツ在学中から自主制作映画を監督。2004年に「自転少年」で商業監督デビュー。「60歳のラブレター」(09年)「白夜行」(11年)「神様のカルテ」(同年)などヒット作を手がける。近年はテレビドラマの演出にも取り組む。中島健人さん、松本穂香さんらが出演する最新作「桜のような僕の恋人」が動画配信サイト「ネットフリックス」で配信中。

ノンフィクションをフィクションでつなげる

 物語の主人公は42歳の圭子。20代で仕事を辞め生活保護を受けながら認知症の母を介護し、結婚もキャリアも諦めた。ある日、高校時代の交際相手と再会し、日常が輝き出す。だが、その矢先に母が急死。殺人事件の被疑者として警察の取り調べを受ける――。

 脚本は監督オリジナルで、テーマは「幸福」。介護や性犯罪など最近起きた「不幸」ないくつかの事件を下敷きに、「ノンフィクションをフィクションでつなげた物語」という。

 「幸福の反対側にある不幸を見つめることで、幸せにたどり着けるのではないかと考えた。事件を集約することで、いまの世の中も見えてくる」

 映倫のレーティングは、18…

この記事は有料会員記事です。残り1394文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment