世田谷一家殺人事件から20年 遺族「真実を知りたい」

 東京都世田谷区の会社員宮澤みきおさん(当時44)方で4人が犠牲になった「世田谷一家殺害事件」から20年。警視庁は延べ28万2千人超の捜査員を投入してきたが、事件は未解決のままだ。誰が、なぜ殺害したのか。遺族は容疑者逮捕の報を待ち続ける。

 事件発覚は2000年12月31日。みきおさんと妻の泰子さん(当時41)、長女にいなさん(同8)が刺殺され、長男礼君(同6)が絞殺されているのが発見された。現場には血痕や指紋、衣類といった犯人の遺留品が多数残されていた。

 警視庁がこれまで照合した指紋は約5千万件に上る。警察が所有する侵入犯罪などの前歴者の指紋に加え、4人の知人や聞き込み捜査などで確認が必要と判断した人からも任意で採取してきた。

 市民からの情報提供は今年11月までに1万3658件。今年だけで100件を超える。長い月日が過ぎた事件としては異例の多さで、警視庁は1件ずつ関連を調べてきた。事件から約7300日。地道な作業が続くが有力情報はない。動機も不明のままだ。

 みきおさんの母の節子さん(89)は警察からの容疑者逮捕の連絡を待ち続ける。「今日もダメだった」とカレンダーに斜線を入れるのが日課だ。「一日一日は長いが、過ぎてみるとあっという間だった。もう20年かという気持ち。証拠がたくさんあるのになぜ解決できないのか。もどかしい」

 今月中旬、支援者に誘われて現場を訪ねた。4人の死を実感するのが怖く、室内には一度も入っていない。この日も2階建ての家を外から見つめた。にいなさんと礼君が駆け寄って来る姿が頭に浮かんだ。

 みきおさん夫婦は共働きで、節子さんは週に2回、埼玉県の自宅から世田谷を訪ね、子どもらの面倒をみた。電車とバスを乗り継いで片道2時間。近くのバス停に着くと、玄関先で待っていた2人が「ばあちゃん!」と声を上げて駆けてきた。近くの公園で遊び、夕飯を食べさせた。2人とも好き嫌いせず、いつもきれいに食べた。クリスマスや誕生日に2人が作ったケーキ、にいなさんの歌声、運動会の応援――。大切な思い出をたくさんくれた、かけがえのない家族だった。

 「なぜ事件が起きたのか、なぜ幼い孫まで殺されたのか、真実を知りたい」(滝口信之、高島曜介)

 世田谷一家殺害事件 2000年12月、東京都世田谷区上祖師谷3丁目の宮澤みきおさん方で発生。現場には犯人の遺留品が多数残され、アイスクリームを食べ、茶を飲み、みきおさんのパソコンで劇団のサイトを見た跡もあった。室内を物色し、銀行のカード類を並べていたため金品目的との見立てや、一家の知人による犯行との見立てもある。犯人の血液型はA型、身長は170センチ前後。DNA型から外国にルーツがある可能性もあるという。

 未解決の原因については、指紋などの物証に期待しすぎるあまり、初動捜査で関係者や通行人などへの聞き込みが甘かったためではないかとの指摘もある。

 事件解決に結びつく情報を提供した人には公的な特別報奨金(上限300万円)と、地元有志らの私的懸賞金(上限1700万円)が支払われる。情報は成城署捜査本部(03・3482・3829)へ。


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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