世界2位の囲碁AI開発者・山口祐氏が語る人間の能力「圧倒的にすごい。開発していてうらやましい」(AbemaTIMES)

 囲碁の世界において、既に常識になっていることがある。「囲碁AIは人間の棋士より強い」ということだ。ほんの数年前までには、コンピューターソフトが人間に勝てるようになるまで、数十年はかかるというのが定説だった。ただ今や、現役のトップ棋士たちが、ソフトを活用して研究を進める時代に突入している。囲碁AIの世界大会・世界電脳囲碁オープン戦で2位に入った「AQ」の開発者・山口祐氏も、はっきりと「AIの方が強い」と断言する一方、改めて人間が持つ能力を「圧倒的にすごい。開発していてうらやましい」のだという。

 「囲碁とAI」という言葉において象徴的なイベントは2つある。AlphaGo(アルファ碁)が、2015年10月に初めてプロ棋士を破った時、そして2017年5月に世界トップ棋士を下し、その後「対人間戦」の引退を発表した時だ。山口氏も「AlphaGoが出てきて、常識が覆されましたからね。AIの方が強い点として、いろんな点を網羅的にできますし、コンピューターはほんの少しの違いにも敏感。人間との思考の違いは先入観にとらわれないことですね」と、優位性を口にした。

 囲碁の始まりは4000年前とも言われる。そのころから人間同士が戦いを続け、優れた戦略を考え続け、今に至っている。それまでに生まれては消えていった戦い方があり、「この戦略は優れている」「この手はもう使えない」といったものが脈々と継がれてきた。ところがAIには、今までがこうだったという先入観が一切ない。人間には一瞬で無理そうだと思われる手も必死で考え、今まで発掘されなかった一手を見つけ出す。その繰り返しが現在の「AI>人間」という式を作り出した。

 そんな山口氏は、新たな囲碁AI「GLOBIS-AQZ」の開発に取り組んでいる。このAIで世界一を取り、そして人間の棋士を強く育てる。それが目的だ。「100台とか200台とか、非常にたくさんの演算マシンを利用しています。昨年準優勝でしたから、やはり世界一を目指したい。それに大会が終わった後は、このプログラムをオープンソースとして世界的に公開し、誰でも自由に使える形にしたいです」。超高度なコンピューターを使っても、その複雑性、抽象性ゆえに「完全解析というのは、まだ難しい」と言われる囲碁の世界。19×19の盤面であるにもかかわらず、現実世界の事象に匹敵するほど無限に広がっていく。少しでも真相に近づき、その仕組みを人間に伝える。山口氏の見る未来は、そんな世界だ。

 これだけ人間の頭脳を超えるだろうAIの開発をしている山口氏だが、むしろ人間の能力には驚くばかりだ。「コンピューターは学習がすごく早いと言っても、人間の方が圧倒的にすごいです。囲碁で言えば、コンピューターは数千万局をやってようやく強くなりますが、人間は10局も見れば同じような形が学習できる。人間の学習能力は、実はすごく高いんですよ。そういったところは、コンピューターの開発をしていて、うらやましいと思います」。人間が持った「想像力」の賜物か。一度経験しなければ再現・分析できないコンピューターに対し、インプットしたものから似たようなものをイメージして作り出す。正確性はAIに劣るかもしれないが、まさに「一を聞いて十を知る」、人間だから為せる業だ。


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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