中国で起きていること(3) 庶民のために闘う弁護士が払った代償(InFact)

 ある日突然夫がいなくなった。夫は弁護士。庶民の権利の為に奮闘してきた。なぜ夫は消えたのか。
 中国で起きている現実をインファクトの宮崎紀秀が追及するシリーズの3回目。(文、写真/宮崎紀秀)

妻になれたことを誇りに思う

 李文足 は、元々、子育てに手一杯で、家庭が生活の中心の主婦だったと認める。その彼女を変えたのが、夫を探そうとする度に、様々な形で加えられた嫌がらせや圧力だった。李は、涙に濡れた瞳で、キッパリとこう言った。  「今の中国の劣悪な環境で、夫は他の人が真似できないことをやったのです。私は妻になれたことを、本当に誇りに思っています」  夫の王全璋は、中国で人権派と呼ばれる弁護士だった。庶民の権利を守るためには、当局との対立も厭わない。拘束前に撮影された映像で、王全璋はこう語っていた。  「私は中国人の人権が永久に保障される制度ができるように努力していきたいと思う」  地方政府や開発業者などと対立する強制立ち退きの被害者や、中国政府が「邪教」とみなす法輪功の信者の弁護なども引き受けた。同じ映像の中で、「公民の基本的な権利である思想・信仰の自由がひどく侵害されている」とも述べていた。また、まるで自らの身にふりかかることを予言するかのような、中国社会の現実についても指摘していた。  「中国の政治構造や法律制度は、公民の個人の権利を守ることに関してはひどく欠けていると思います。司法にも明確なプロセスがなく、公民は一旦国家の取締の標的になったら、いかにも簡単に刑務所に収監されます」

拘束される弁護士

 王全璋と同じ弁護士事務所に所属する王宇も、7月9日に身柄拘束された人権派弁護士の1人。彼女が拘束されたのは、息子がオーストラリアへ留学に行こうとしていた日だった。息子も出国を阻止された。  「一人の母として、より大切なのは息子です。『お前が捕まっている限り、子供は留学に行けない』と言われました」  彼女はこれまでの弁護活動に誤りがあったとテレビで認めることに同意し、拘束から1年余り経った後、釈放された。国営テレビのニュースは、王宇がインタビューの中で反省の弁を述べる様子を放送した。  「弁護士として法律を遵守し、正しい方向をはっきりと認識し、他人に利用されることがないようにします」  王宇の話を聞けたのは、釈放後1年余り経った頃だった。その際、王宇は自らの弁護活動に違法な点はなかったと強調した。  「私の弁護の原則は当事者の合法的権利を守ることです。しかも、中国の法律に従い弁護をしていました。彼らが私を拘束した理由は、警察や検察の違法行為を暴露するからです。彼らは面子を潰されたと思うからです」 (続く)

宮崎紀秀

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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