亡き友とできなかった仲直り 小2の長男に背中押され、手を合わせた

 「全然来られなくてごめんね」

 阪神・淡路大震災の発生から27年を迎えた17日、神戸市中央区の公園「東遊園地」で、京都市中京区の城戸綾子さん(40)は、亡くなった友達にわびた。

 震災を忘れないとの意味を込めて「忘 1・17」の文字に並べられた竹灯籠(とうろう)。城戸さんが、ここで手をあわすのは初めてだ。

 当時は中学1年で、神戸市東灘区に住んでいた。揺れに驚いて自宅を飛び出し、マンションの敷地で震えていると、倒壊した近所の住宅で救助を手伝っていた父が戻ってきた。長い黒髪の少女を担いでいる。

 幼なじみの八久保(はちくぼ)直子さんだった。

 小学校で二人はたびたび同じクラスになり、よく近所の子たちと一緒にゴム跳びや鬼ごっこをした。八久保さんは物静かな雰囲気で、ほかの子より大人っぽい感じがあった。

 だが中学に入った頃、理由も覚えていないほどささいなことでけんかになった。いつか仲直りできると思っていたのに……。

 「あのとき謝っておけばよかった」。後悔と申し訳なさが入り交じり、27年間、墓参りも、1月17日に東遊園地に来ることもできなかった。

 先月、カブスカウトで防災を学んだ小学2年の長男・瑛士(あきと)くんに「神戸に住んでいたの?」と聞かれた。初めて震災の体験を話すと、「神戸に行きたい」と言われた。

 城戸さんは迷った。私が手を合わせて直子ちゃんはどう思うだろうか。ずっと会いに行けなかったのに友達と言ってもいいのだろうか。

 だが、瑛士くんの震災を知りたいという思いに背中を押された。「直子ちゃんだけでなく、一家全員が亡くなった友達もいる。みんながいたということを、自分が次の世代に伝えないといけない」

 17日早朝、東遊園地で手を合わせた後、瑛士くんが言った。「今日のこと、学校のみんなにもちゃんと話すよ」。自分なりに理解してくれたようでうれしかった。帰り道、神戸に来る前より少しだけ、肩が軽くなったような気がした。(武田遼)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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