傑作の主人公になりきって コートールド美術館展で企画



 傑作の主人公になりきって、絵に対する理解を深めて――。名画の登場人物に扮するセルフポートレートで知られる美術家・森村泰昌さんが25日、東京・上野の東京都美術館で開催中のコートールド美術館展を舞台に、観客を絵の主人公に変身させる企画を実施した。

 同展の目玉の一つは、19世紀を代表する画家、エドゥアール・マネが描いた「フォリー=ベルジェールのバー」で、主人公は美しくも少し謎めいたバーメイドだ。

 森村さんは30年前、同作を題材にしたセルフポートレートを制作。今回はその際に使った、絵の背景部分のセットや衣装を再利用した。

 企画には、約30倍の競争率となった抽選をくぐり抜けて選ばれた3人が参加。「チーム・モリムラ」のメイクアップ担当、スタイリストたちにより、バーメイドに変身。絵に登場するシルクハットの男に扮した森村さんとともに、チームが擁する写真家のカメラに収まった。

 アートファンで、友人に勧められて応募した都内在住の会社員、鶴田寛子さん(29)は「絵に描かれたバーメイドの表情を出すのは難しかった。実際になりきってみて、孤独や繊細さのほかに、希望もあるのかも、と感じた。見る人の感情とリンクして、いろんな解釈が生まれるのかもしれません」と話した。

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 印象派・ポスト印象派の屈指の名画を所蔵するロンドンのコートールド美術館は、英国の実業家サミュエル・コートールドのコレクションを核に、コートールド美術研究所の展示施設として1932年に開館した。館の改修工事にあわせて今展が企画され、絵画・彫刻約60点が出展されている。

 約20年ぶりに来日した「フォリー=ベルジェールのバー」は、ミュージック・ホールの一角にあったバーに立つ女性を描いたもの。女性の謎めいた表情や、鏡の中にだけ映る男性の姿など、画面に現れた不思議の数々に引き込まれる。会場では、X線調査などの研究の成果も、パネルで紹介している。

 コートールド美術館展は12月15日まで。詳細はホームページ(https://courtauld.jp)。






Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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