元気を「充電」してくれた5分間 私の新婚時代を支えた緑道の桜並木

 30年前、人生で「ナンバーワン」と呼べる桜に出会った。

 和歌山市紀三井寺にある緑道の桜。多賀井美子さん(55)は、後にも先にも、ここを越える桜を知らない。

 1993年2月、職場で知り合った夫と結婚式を挙げた。職場は雰囲気が良く、仕事を続けたかったが、「寿退社」が当たり前の時代。退職後、和歌山で仕事をしていた夫と、紀三井寺で主婦としての新生活が始まった。

 縁もゆかりもない土地だったが、不安よりも結婚の喜びや、一から生活を築いていく楽しみの方が勝っていた。

 その2年前、父が急病で他界した。

 その数カ月前には姉も結婚して家を出ていた。家族の形が急に変わったことで、心の整理がつかない時期を母と2人で過ごした。時間が解決してくれるとは思えなかった。

 残された母を思うと、自分のことしか考えていなかったなと今では思うが、結婚を機に実家を出て、心機一転、誰も知らない土地で新しい生活を築いていけたらと思った。

 新居での生活を始めてまもなく、自転車で5分ほどの場所にあるスーパーの朝市に、新鮮な魚が並ぶのを知った。

 海のない奈良出身の自分から…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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