元銀行員に聞く半沢直樹 優秀でも今作は苦しみ大きい?

 7年ぶりの続編が人気を博しているTBS系ドラマ「半沢直樹」は、27日夜に最終回を迎えます。ドラマが描く銀行や証券界と現実はどこまで似ているのか――。元銀行マンで現在は法政大大学院政策創造研究科教授の真壁昭夫さんに聞きました。

 約30年銀行の世界にいて、証券部門にもいました。懐かしい気持ちと「ドラマの世界だな」という気持ちが入り交じりながら楽しく見ています。東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券に出向し、難なくこなした半沢は優秀です。証券と銀行はビジネスの性格が全く異なり、互いの業務を十分に理解することは難しいからです。

 銀行員はいわば農耕民族。コツコツ努力することで作物は実ります。一方、証券会社の仕事は狩猟。ビジネスチャンスがある時に集中します。リスクをとって動くことも。銀行員が証券ビジネスをすることは、農家がいきなり鉄砲を持って狩猟するようなもの。半沢は苦しみの方が大きかったのではないかな。

 現在は社会人大学院で教えていますが、かつて信州大で大学生に教えていました。学生から「銀行の内幕を適切に表していますか」と聞かれたり、就職相談を受ける機会があったりした時は「イエス&ノーです。ケース・バイ・ケースです」と答えていました。その印象は、今シーズンも変わりません。あの番組で金融機関に行きたいという人が増えたかというと、そうは思わない。

 かつて銀行はなくならないと言われてきましたが、銀行を取り巻く状況は変化しています。特に2000年代以降、世界の経済が定期的に大きな打撃を受けています。

 リーマン・ショックやコロナ禍の経済危機で、世界的に景気を支えるため、中央銀行がたくさんのお金を刷っていることで金利が下がり、銀行の収益性は悪化しています。半沢直樹の世界は内部の権力抗争に終始しており、今という視点で見ると少し牧歌的です。現在の銀行はどう生き残るのか、もっと必死に考えているのです。(聞き手・宮田裕介)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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