共通テスト平均点、下がるとの見方が…コロナで奮起?

 16、17日に初めて実施された大学入学共通テスト(第1日程)の平均点が公表された。予備校や高校関係者の間では、前身の大学入試センター試験より問題が難しくなり、平均点は下がるとの見方が強かった。だが、ふたを開ければ、大きな差がない教科が目立った。なぜなのか。

 東京工業大を志望している神奈川県の田端田(でん)さん(18)は高3の5月、文系から理系に志望を変えた。昨年は思うような結果が出ず、浪人して今年に賭けた。「共通テストに変わって、点数がとりにくくなった印象はない」。東京都の中高一貫校出身で、1浪して東京大をめざす男性も「国語は保守的なスタイルで大きな変化はなかった。数学もセンター試験とあまり変わらず、去年より、よくできた手応えがある」という。

 一方で教科によっては問題のページ数が増え、出題傾向が変わったため、力を発揮しきれないケースはあったようだ。英語、国語など3科目を受けた大阪府吹田市の浪人中の男性(19)は、いずれも正答率8割以上をめざしたが、自己採点では国語を除いて約7割にとどまった。「考えすぎて時間が足りなくなった」。兵庫県西宮市の浪人中の女性(19)も「どの科目も暗記だけじゃだめで、覚えた情報を使えないといけないと思った」。福岡市の私立高3年の男子生徒(17)も「出題の仕方が少し異なると感じ、戸惑った」と振り返った。

 生徒の3分の1が国公立大志望という首都圏の公立高校の進路指導主任は「できる生徒は例年通り8割以上とっているが、読解力がない中下位層には、これまで以上に厳しい内容だった」と分析する。

 代々木ゼミナールの佐藤雄太郎・教育事業推進本部長は、平均点が昨年並みだったことについて「問題の量が多く、読解力や判断力が問われる難しい問題と見ていたので、意外な結果」という。特に注目するのは、センター試験でもめったになかったほどの「数学Ⅱ・数学B」「生物」の平均点の高さだ。「理系志望者を中心に、この2科目が平均点以上だった受験生は強気の出願をし、逆の場合は安全志向が強まり、例年以上に二極化が進む可能性もある」とみる。

 河合塾の富沢弘和・教育情報部長は「出題傾向が変わり、難しくなると前々から言われていたので、かなり準備して試験に臨んだ生徒が多かったのではないか」と指摘する。香川県の県立高教諭も「コロナ禍の逆境で危機感が募り、生徒たちが思った以上に頑張ったのかもしれない」と話す。

 予備校などの模擬試験は2017、18年に実施された共通テストの試行調査を踏まえて作成された。実際の共通テストは試行調査の内容から修正されており、福岡市の福岡県立高校3年女子生徒(18)は「英語以外はセンター試験とあまり変わらなかった。模試の方がよほど共通テストっぽかった」と語る。

 栃木県の県立高校の進路指導担当教諭は、生徒の自己採点のミスが多いことが気がかりだという。正確な点数を把握できないと、出願先を決める際に教員側が安全な方向に助言し、安全圏の大学に志望先のランクを落とすことになりかねない。「問題の分量が多くて見直しの時間がなく、自己採点用の解答を書き写す際のミスが多かったようだ」

大学入学共通テスト第1日程の平均点(中間集計)

教科         科目     平均点(昨年の大学入試センター試験の確定平均点)

国語(200点)   国語     116・05(119・33)

地理歴史(100点) 世界史A     46・97(51・16)

           世界史B     65・79(62・97)

           日本史A     50・16(44・59)

           日本史B     66・06(65・45)

           地理A      60・88(54・51)

           地理B      62・52(66・35)

公民(100点)   現代社会     54・34(57・30)

           倫理       71・76(65・37)

           政治・経済    51・32(53・75)

           倫理、政治・経済 69・18(66・51)

数学①(100点)  数学Ⅰ      39・54(35・93)

           数学Ⅰ・数学A  59・20(51・88)

数学②(100点)  数学Ⅱ      40・62(28・38)

           数学Ⅱ・数学B  62・85(49・03)

           簿記・会計    45・98(54・98)

           情報関係基礎   59・67(68・34)

理科①(50点)    物理基礎     38・12(33・29)

           化学基礎     25・60(28・20)

           生物基礎     30・17(32・10)

           地学基礎     34・71(27・03)

理科②(100点)  物理       58・89(60・68)

           化学       52・80(54・79)

           生物       73・14(57・56)

           地学       47・06(39・51)

外国語(100点)  英語リーディング 60・35(*58・15)

           英語リスニング  57・23(*57・56)

外国語(200点)  ドイツ語     118・96(147・90)

           フランス語    131・08(138・41)

           中国語      160・91(167・41)

           韓国語      142・76(147・50)

*センター試験の英語の配点(筆記200点、リスニング50点)を各100点満点に換算した点数


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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