北野高校に伝わる「国葬事件」 あの時の生徒が今思うこと

 「国葬事件」。大阪府立北野高校で、そう伝わる出来事がある。

 ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんや漫画家の手塚治虫さん、元大阪府知事橋下徹さん、アナウンサーの有働由美子さんらの母校だ。

 1967年11月1日。吉田茂元首相の国葬が行われた翌朝のことだ。

 北野高生約20人が授業を無断で欠席し、府の教育委員会前に座り込んだ。

 府立高校に対し、弔意を示すため、午後から半日休校とする通達を出したことに、抗議するためだ。

 政府は、国民に協力を呼びかけていた。当日の午後は、官公庁は業務に差し障りのない範囲で職員を早退させ、国公立の小・中・高校、大学を休校とする方針を示した。

 相反する評価が交錯する首相経験者に対し、国を挙げて功績をしのび、喪に服する。政治的に中立であるはずの学校が休みになる。

 そんな「国葬」に疑問を持つ生徒たちが集会を開いて話し合い、抗議文をしたためた。

 あの国葬から55年。

 9月27日に迫る安倍晋三元首相の国葬の賛否をめぐり、世論が揺れている。

 大阪市に住む喜多幡佳秀さん(73)は、あのときの集会に参加した一人だ。

 吉田氏の国葬について今は「戦後の復興を成し遂げたヒーローとして国民をまとめる大義名分があったのでは」とも感じる。

 だが、今回の国葬は「私的なにおいがする」と言う。「権力や立場、自民党内の事情が絡み、岸田文雄首相が政権を安定させるために、国葬を利用しているとしか思えない」

 那覇市に住む内海正三さん(73)は当時、抗議文を受け取ってもらおうと、府教委前に1時間あまり座り込んだ。「不安はありましたが、若さの勢いですかね。人生の大きな転換点となりました」(大滝哲彰、矢島大輔)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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