午前2時半の「昼ご飯」 歌舞伎町の深夜薬局は眠れない

 キャバクラ店勤務、ホスト、バーの店員、AVタレント――。東京・歌舞伎町に、薬を調剤しながら、様々な人々の「悩み」に耳を傾ける薬局がある。夜から朝(午後8時~午前9時)にだけ営業するその調剤薬局に、昨年12月、密着した。

午後7時40分

 「ニュクス薬局」代表の薬剤師、中沢宏昭さん(42)は自転車に乗って現れた。店に入り、白衣に着替えると、自動扉のプレートを「営業中」にひっくり返した。

午後8時25分

 20代の女性が1人、店を訪れた。カバンから出したのは抗不安薬と睡眠薬の処方箋(しょほうせん)。「今日はいつもより早いね」と中沢さんが笑顔で話しかける。女性が「今日はお休みなんです」と笑い、店内の椅子に座った。

 ペットショップで働く女性は3カ月前から店に通っているという。「もともと病みやすい体質なんです。社内でも人間関係が良くなくて……」

 家の近くにも調剤薬局はあるが「他の薬局に行っても冷たく事務的な感じ。ここの先生は毎回顔色とかを見てくれて、『今日、元気ないね』とか声をかけてくれる。つい何でも相談しちゃいます」

午後10時

 睡眠薬や性感染症を治す抗生物質を受け取る女性客が来店した。薬を受け取り繁華街に消えていく――。

 中沢さんは「客の8割が夜働く人。それぞれに事情を抱え、抗うつ薬、抗不安薬や睡眠薬を求める人が多い」と話す。

 店の前ではホストが客を呼び込んでいる。外のにぎやかさに比べ店内は静かだ。「客引きには注意しましょう」と呼びかける自動音声が時折、店内にも聞こえてくる。

必要とする人がいる

 歌舞伎町2丁目に位置する薬局は中沢さん1人で切り盛りする。医師の出した処方箋に基づき、薬を調剤し販売する。

 もともとは大手薬局の薬剤師だった。前の職場で、夜間営業の調剤薬局を立ち上げる案が持ち上がったが、結局立ち消えになった。

 それでも、中沢さんの「これしかない」という思いは消えなかった。「この不夜城なら、深夜に薬を必要とする人がいるはず」と資金をため、2014年1月に開業した。店名の「ニュクス」はギリシャ神話に登場する「夜の女神」の名だ。

午前1時半

 ホストの男性(28)が入店し、「黄連解毒丸(おうれんげどくがん)ください」と注文した。二日酔いに効く漢方薬だという。中沢さんが手慣れた手つきで商品を手渡す。

 「ありがとうございます」。男性はすぐに会計を済ませ外に出た。「いつもこれを買いにきます。夜の仕事なので。結構効きますよ」。外で待っていた同伴客と合流した。

午前2時5分

 「ただいまー」。キャバクラ店…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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