半世紀前の謎、東大解明 薄くすると電気が流れなくなる

 電気が流れる物質なのにナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)まで薄くすると電気が流れなくなる――。50年以上前に予言されていたものの、確かめられていなかった現象を東京大などの研究チームが確認し、その理由も解明したと発表した。薄くすると内部で自由に動ける電子がなくなり、電気が流れなくなるという。論文は21日、科学誌サイエンス・アドバンシズに掲載される。

 鉛の次に重い元素のビスマスは、ふつうは電気を流すが、どんどん薄くしていくと電気が流れなくなるはずだ。そんな予言が半世紀前にされていたが、確認は難しかった。

 研究チームは、ナノサイズまで薄くしたビスマスの結晶に高いエネルギーの光を当て、表面や内部の電子がどんな状態にあるかを観察した。その結果、約10ナノメートルより薄くなると、内部で自由に動ける電子がなくなることが確認できたという。一方、どれだけ薄くしても表面だけは電気が流れる状態だった。

 東京大の松田巌准教授(表面物理)は「この仕組みを応用すれば、極めて小さなスイッチを作れるかもしれない。高速、省エネなコンピューターができる可能性がある」と話した。

 論文はサイト(https://advances.sciencemag.org/content/6/12/eaaz5015)で読める。(今直也)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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