卒業式中止や縮小、寂しき旅立ちの春 新型コロナ 在校生1人の送辞/謝恩会なし「はかま着たかった」(中国新聞デジタル)

 新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、全国で卒業式の中止や縮小が相次いでいる。突然の臨時休校で友だちや後輩に会えないまま、人生の節目を迎える卒業生も多いようだ。編集局にも連日、子どもたちの気持ちを思いやる保護者や先生の声が寄せられている。少し寂しい「旅立ちの春」、子どもたちは何を思っているのだろう。

 体育館の扉も教室の窓も換気のために開け放たれ、冷たい風が吹き込んでいた。7日、広島市中区の修道高の卒業式。約560人いる在校生の姿はなく、卒業生277人は異例の門出の日を迎えていた。

 午前10時前、体育館に向かうと、入り口には消毒用アルコールが置かれていた。生徒や保護者が手にすり込んで会場へ。配布された座席表には在校生の席も記されたままだった。

 「先輩の未来が素晴らしく輝くものであることを、出席できなかった在校生一同、心より願っています」。たった一人で送辞を読み上げたのは、生徒会長の中村碧さん(16)。前夜まで文面をひねり、「後輩不在」の思いを盛り込んだという。

 卒業式そのものが中止になった学校も多い。安佐南区の安田女子大では8日の式典がなくなった。制服にマスク姿の4年生が学内で学科ごとに集まると、「濃厚接触を避けるため」と机に1枚ずつ卒業証書が置いてあった。保護者の来場も認められなかった。

 小西望さん(22)は「謝恩会が中止されなければ、はかまが着られたのに…。母親も楽しみにしていたので残念です」と話した。

 南区の県立広島大も卒業式を中止し、学科だけの授与式にする予定だ。保護者や在校生は参加できない。卒業を間近に控えた軟式野球部マネジャーの川元愛恋(えれん)さん(23)はそわそわしていた。「式後の後輩による『出待ち』もだめみたい。伝統的に先輩へ花束を贈っていたし、私もやってほしかったな」

 在校生のお祝いメッセージを工夫を凝らして伝えていた学校もあった。南区の段原小は臨時休校前の2月下旬、恒例の「6年生を送る会」を動画方式に切り替えた。児童の集団感染のリスクを避けるための苦渋の選択だったという。

 収録した約45分間の映像を校長室で見せてもらった。「この日のために一生懸命準備しました」。在校生の女の子がカメラに向かって話し出す。続いて1~5年生が歌やダンスを披露。学年ごとの発表が終わるたび、司会役の男の子が登場する凝りようだ。開かれるはずだった会の様子が十分に伝わってきた。

 子どもたちとの駆け足でのお別れに、先生も奮闘している。安佐北区のある中学校では、未完成のままの卒業制作の装飾品を教員が引き継いで作っていた。「なんとか完成できそう。卒業式にサプライズでお披露目したい」と校長。ここにも「伝えたかった気持ち」があふれていた。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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