国宝・重文のラベルより自分の引き出しで 博物館長が語る楽しみ方

 博物館はいま、大きく変わりつつあります。歴史や文化、芸術、自然など様々な「お宝」を保存、展示する学びの場としてだけでなく、人々が集まり未来を考える開かれた拠点へと役割を広げています。人生を豊かにする博物館の楽しみ方について、九州国立博物館長で国立文化財機構理事長の島谷弘幸さんに聞きました。

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 博物館が持つ文化財は人類共通の財産で、とても有用なものです。博物館は勉強するところでもあるけれど、やすらぎや活力を生み出すところとしても利用してもらいたいと考えています。

 私がみなさんによく言う話があります。博物館に来たら展示をざっと見て、好きなものを三つ覚えてください。そして、なぜそれを好きなのか考えて、家に帰ってから家族に話してみてください。意外にわかっていないことがよくわかります――。

 ちょっと冷たい言い方ですが、しっかり見ることが大切であると気づきます。これを繰り返すと日本文化に関わる引き出しがどんどん増えていきます。前に見たものと比べてどうかと比較ができるようになると、それがどのくらい大変で魅力的なものかがわかるようになります。

 みなさんがニュースの大小を自分である程度判断できるのは、いつも新聞を読んだりニュース番組を見たりしているからですね。それと同じです。芸術文化では自分で判断できない人が多いので、国宝や重要文化財といった指定に寄りかかることが多い。でも、その指定を審議する分科会の会長をしている私が言うのも何ですが、未指定でも魅力的なものはあります。ぜひ自分の引き出しを増やして、博物館を楽しんでください。

 一般の方々の意見を大切にし…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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