地方議会、女性議員の声が施策推進も 国政に問われるジェンダー平等

 衆院選ではジェンダー(社会的な性差)の平等が論点の一つとなっている。女性の進出が特に遅れている政治の分野だが、地方議会では男女同数が実現し、女性議員の声が施策推進につながったケースもある。「候補者男女均等法」の施行から3年、取り組みの底上げが求められている。

 大阪府の北東部に位置し、京都府に隣接する大阪府島本町。人口3万2千人の緑豊かな住宅地だ。

 「近隣自治体と協力し、オンライン授業を授業時間にカウントしやすくなるよう文部科学省に要望するべきだ」。9月3日の町議会で、一般質問に立った中田みどり町議は、コロナ禍で広まったオンライン学習をめぐる課題を指摘した。この日、一般質問をした7人のうち4人が女性。テーマは学校体育館の暑さ対策や補聴器購入の助成制度創設など様々だった。

 議員定数は14で、2013年と21年の町議選で男女同数になった。17年に初当選した中田さんは「性別は多様性の一つ。年代や経歴も含め、もっと多様な議会となるべきだ」と話す。

 東京や横浜のベッドタウン神奈川県大磯町(人口3万2千人)で、町議会が初めて男女同数となったのは03年。議員定数が14となった07年以降はほぼ、女性が過半数の8人か男女同数の状況が続く。

 03年以降、ケーブルテレビでの本会議の生中継、各議員の議案賛否の公表、一般質問の回数制限撤廃など議会運営は変わった。竹内恵美子議長は「性別関係なく誰でも何でも意見してきた。そんな雰囲気が議会改革を進めたのかもしれない」と振り返る。

 女性議員の気づきや連携が、具体的な施策などにつながったケースもある。

 小田理恵子さんは川崎市議だった14~15年、女性の東京都議や専門家と協力し、全国の政令指定市と東京23区にアンケートを行った。認可保育施設に入れず、育児休業を延長した場合などは待機児童に数えられない「隠れ待機児童」の実態を調査。待機児童が少ない自治体で、隠れ待機児童が多い傾向が分かった。「子育て関連の相談を受けることが多く、問題の所在を見つけやすかった」

 東京都多摩市は3月、経済的な理由で生理用品が買えない「生理の貧困」対策として、防災用に備蓄していた生理用品を全ての市立小中26校に配布した。

 女性議員全9人が市長や教育長に要望した翌日、市長は配布を表明した。池田啓子市議は「普段は会派で対立することもあるが、会派を超えて女性議員がまとまれたのが大きかった」と指摘する。

 ただ、女性議員がいない地方議会も多い。内閣府によると、全国の1741市区町村議会のうち298で、17・1%にのぼる。衆院の女性議員の割合は10・2%、参院は23・1%。今回の衆院選でも、女性候補は17・7%にとどまる。

 男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党などに求める候補者男女均等法が18年に施行されてから初の衆院選となるが、女性候補の割合は前回の17年衆院選と同程度だ。

 同法では、女性候補の割合の数値目標設定は努力義務。一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」の導入には反対論も根強いが、超党派の議員連盟の会長を務める中川正春・元文科相は必要性を訴える。「すべての人が自己実現しやすい社会を築くことは、女性だけでなく、男性の問題でもある」

 内閣府の資料などによると、フランスの下院にあたる国民議会女性議員は4割だが、約20年前は現在の衆院とほぼ同じ割合だった。変化をもたらしたのは00年制定の「パリテ法」だ。パリテとは「同等・同数」を意味する仏語で、政党に候補者を男女50%ずつとするよう義務付ける。50%から離れるほど政党助成金が減る罰則もある。

 パリテ法に詳しい専修大講師の村上彩佳氏によると、当初は50%を守らない政党もあったため、政党助成金の減額幅を引き上げるなど「抜け穴」をふさぐ法改正を繰り返した。背景にあるのは「違う経験をした議員がいてこそ、様々な現場の声を政治に届けられる」との思想だという。

 日本では政治家を志望する女性がそもそも少ないという課題もある。有権者や他の議員からのセクハラやマタハラ(妊娠・出産をめぐる嫌がらせ)が障壁の一つだとされる。内閣府の4月公表の調査結果では、女性地方議員の57・6%が何らかのハラスメント被害を受けたと回答した。

 6月施行の改正候補者男女均等法には政党や国、地方自治体にハラスメントの防止策を求めることが盛り込まれた。女性議員のサポート団体「Stand by Women」の浜田真里代表は、さらなる対応が必要だと指摘する。「どの政党も対処方針を決める立場にいるのは男性が多く、内部への相談は心理的ハードルが高い。外部の専門的な相談機関を整備することが重要だ」(本多由佳、添田樹紀)

各党のジェンダー平等をめぐる主な公約

【自民】

指導的地位に占める女性割合を3割程度に。女性の雇用悪化などに対応し、経済的自立を強力に支援

【立憲】

選択的夫婦別姓制度を早期に実現。各議会でのパリテ(男女同数)を目指す

【公明】

学校・公共施設での生理用品の無償提供を進める。選択的夫婦別姓制度の導入推進

【共産】

企業に男女別平均賃金の公表、格差是正計画の策定・公表を義務付ける。選択的夫婦別姓制度を導入

【維新】

同一戸籍・同一氏の原則を維持し、旧姓使用にも法的効力を与える選択的夫婦別姓制度を創設

【国民】

選択的夫婦別姓制度を導入。女性候補者比率35%を実現し、先輩議員らによるメンター制度導入

れいわ

罰則規定導入で男女の賃金格差を是正。女性の再婚禁止期間を撤廃

社民

選択的夫婦別姓制度の法制化。クオータ(男女比率割り当て)制で議会などの女性比率を高める

NHK党

選択的夫婦別姓制度の導入の前段階として、「例外的夫婦別氏制度」も検討するよう国会で提案

*各党の衆院選マニフェストなどから

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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