夜間の地震、慌てないために 日頃の備えのポイントは

 13日夜の地震は、東北地方南部を中心に、広い範囲で揺れが観測されました。しばらくの間は余震に注意が必要です。夜間の地震や急な停電にも慌てないためにどのような備えが必要か、専門家や経験者に聞きました。

看護師・辻直美さん

 13日夜の地震後、揺れが大きかった地域の友人たちからは、「何をしていいかわからない」と続々とメッセージが届きました。人間誰しも、想定外のことが起きたらフリーズしてしまうんです。「とにかく、深呼吸を」と打ち返しました。

〈つじ・なおみ〉被災地での活動経験を生かし、大阪府を拠点に防災と感染対策の啓発をしている。近著に「レスキューナースが教える新型コロナ×防災マニュアル」。

 とっさの時にも冷静に動くには、普段からいろいろな場面をシミュレーションして「自分との約束」をしておくことが必要です。地震なら、「発生直後」「揺れが落ち着いたとき」「その後」にどうするか、を3段階くらいで考える。

 例えば、今回のような夜中の地震なら「揺れたら、とにかく布団をかぶる」「揺れが収まったら、懐中電灯でまわりの状況を確かめる」「建物が大丈夫ならとどまり、倒れたりしていたら外に避難」といったイメージです。場面ごとにたくさん約束をつくっておけば、何をしていいかわからなくてただおろおろすることはありません。

大事なのは「死なない」こと

 災害で大事なのは「死なない」ことです。医療が逼迫(ひっぱく)している今は、けがをしても病院に受け入れてもらえないおそれもあり、「けがをしない」ことも大事です。

 当たり前のように思いますか? では、あなたの部屋は、大地震でもけがをしないようになっていますか。まわりを見渡してみてください。「やばそうだな」と思うところがありませんか。「物が落っこちてきそう」と思うなら、床に下ろす。「テレビが倒れるな」と気づいたら、固定する。

拡大する13日夜の地震で物が落ちた寝室。住人は就寝前でけがはなかったという=仙台市、読者提供

 寝室なら、倒れるおそれがある家具や、高いところにものを置かないようにすることが一番です。どうしても置いておかなくてはいけないなら、倒れるときでも足もとの方に倒れて、頭は直撃しない置き方にする。まず一つ、具体的なアクションを起こしてください。

 コロナ禍の今は、たとえライフラインが止まっていたとしても、自宅が無事ならとどまる方がいいと思います。都市部では避難所の収容人数が人口よりもはるかに少なく、感染対策でさらに制限されることも考えられます。

 避難所に行けば何でもそろっていると思っている人がたまにいますが、そんなことはありません。布団も枕も自分で用意しなければなりません。食料も水も、すぐに人数分提供されるとは限らない。自宅でリラックスして過ごすことができるなら、それにこしたことはありませんし、避難所へ行く場合も自分のものは自分でそろえるのが基本です。

日常に近い生活、できる備えを

 在宅でも避難所でも、準備のポイントは「どうすれば日常に近い生活ができるか」です。

 どうしても必要なものは人によって違いますよね。食べること、睡眠、身のまわりが清潔であること、の優先順位も人それぞれです。自治体などが出している備蓄品のリストを参考にしつつ、自分は何がないと困るか、何があれば心が落ち着くのか、考えてください。特に、薬やめがね・コンタクトレンズは自分に合うものが手に入るとは限りませんから、必須です。

 被災を経験した人らへの聞き取りから、好きな香りのものがあると落ち着けそうだ、ということもわかりました。コーヒーのパックでもいいし、アロマオイルでも。必要最低限のものに加えて、そんなことも意識してみるといいかもしれません。

 スポーツと同じで、準備や練習の積み重ねは裏切りません。発揮されるときがこない方がいいですが、必ずまた、大地震が起こるでしょう。今回、怖かった気持ちを何か一つでも具体的な行動につなげてもらえたらいいな、と思います。(聞き手・栗田優美)

岩手・陸前高田で被災した佐藤一男さん「玄関周りの確認を」

 東日本大震災で多くの人が亡くなった岩手県陸前高田市で被災し、避難所での避難生活を送りました。その後、防災士の資格を取り、避難所運営のアドバイザーもしています。

〈さとう・かずお〉陸前高田市で被災し、自宅を津波で流され、現在は災害公営住宅で暮らす。2014年に防災士の資格を取得、現在は避難所運営のアドバイザーもしている。

 13日の地震の後、ツイッターで、割れたガラスや落ちていたものを踏んでけがをしたといったツイートを目にしました。夜間に停電すると、どこに割れたものが落ちているかも分かりません。玄関にある靴の中にも、割れたガラスなどが入ってしまう危険もあります。使い古したものでいいので、靴を枕元に置いておくといいと思います。

 今すぐにできることとして、暗くても外に安全に出られるように、玄関周りを改めて確認してほしいです。靴箱を倒れないように固定して、靴箱の上には割れやすいものを置かない方がいい。扉の外にあった自転車が地震で倒れて、外に避難できないという危険もあるので、扉の開閉の邪魔になりそうなものはないかを点検してみましょう。

 スマホは非常時にライトとして使えますが、バッテリーをできるだけ使いたくないですよね。私の家では、常時コンセントにつないでおいて停電時には自動で点灯し、非常灯として持ち出せるライトを用意しています。

 スマホや携帯電話のバッテリーが減り、寝る前に「さあ充電しようか」というタイミングで、地震が発生するかもしれません。電話のバッテリーは常に50%以上はある状態を保つように心がけるといいでしょう。

 火災を防ぐために、停電していても、ブレーカーを落としてから避難した方がいいと思います。地震で家電のコードが傷つき停電からの復旧後に、そこから火が出る可能性などもあるからです。

 避難途中で雨が降ってくることも想定し、軍手や雨がっぱは持ち出しリュックの外ポケットに入れて、リュックを背負いながらでもすぐに取り出せるようにしておくといいでしょう。雨がっぱはリュックごとかぶせられる物が望ましいです。雨で滑って転んで手をついた時のけが防止に、軍手で手を保護しましょう。泥水で見えなくなった地面にガラスの破片などが落ちているかもしれません。タオルもリュックの取り出しやすい一番上に置いておくと便利です。

少し多めに買う「ローリングストック」

 東日本大震災以降、車のガソリンは最低でも半分は常にある状態にしています。大雨時は車で逃げることもあれば、噴火からの避難は隣県など遠距離を走らせる必要があるかもしれません。新型コロナウイルスの影響で、避難所の人数が制限されれば、複数の避難所を回る可能性も出てきます。

 停電しても、車内で暖を取ったり、カーラジオで情報収集をしたりといった車の果たす役割は大きいです。

 自宅避難に備えて、日常生活でできる「ローリングストック」という方法があります。少し多めに食材や日用品を買って、古いものから消費して、減った分を買い足すことで、ストックを確保します。

 その中には、調味料も加えるといいでしょう。避難所にいたとき、米やパンは届きましたが調味料がなく、毎日同じ味の食事が続いていました。ある日、一味と七味が届いて食事に使ったら、一気に避難所の人たちの食事の量が増えたという経験があるからです。

 我が家では新型コロナの流行前からマスクも備蓄していました。避難所で生活していた時にインフルエンザの予防や、就寝時にのどが乾燥しないようにするために役に立ったからです。(聞き手・及川綾子)

NPO法人代表・益田紗希子さん「寝室の環境、見直す契機に」

 ちょうど、長女の妊娠がわかっ…


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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