大山加奈さん「子どもの選択肢潰さないで」指導者に警鐘

 バレーボールの元女子日本代表で2004年アテネ・オリンピック(五輪)に出場した大山加奈さん(36)は、小学生時代に全国大会で優勝し、スポーツ推薦で中高一貫の私学、東京・成徳学園(現・下北沢成徳)に進んだ。卒業後はVリーグ・東レで活躍。引退後は子どもたちにスポーツの楽しさを伝える一方、厳しい指導や体罰、暴言といったスポーツ界の問題に対して積極的に思いを発信している。スポーツ推薦制度について、どう考えているのだろうか。

     ◇

 進路を選ぶ時、選手自身の意思が尊重されないケースが結構あります。高校から大学や実業団へのルートが決められていて、その通りに進まなければいけないことも多い。大学や実業団のサポートを受けている高校もあり、やむを得ない部分はある。しかし、指導者が選手の選択肢を潰すようなことはあってはならない。

 私は、スポーツ推薦の特待生で中学に進みました。家庭は裕福ではなかったので、推薦や特待生の制度がなければ、妹と2人とも私立の中高で6年間過ごすことは無理だった。子どもの選択肢を広げてくれる面があるから、一概に推薦制度が不要とは言えません。

 どんな制度もそうですが、活用の仕方、それ次第なのだと思います。

 私は大学には進まなかったけれど、高校卒業後の進路を決める際、いくつか誘っていただいたVリーグのチームから、先生と相談して自分で東レに決めることができました。でも、選択肢を与えられず「ここに行け」という感じだったり、大人の意に沿わないチームに入ってひどい扱いを受けたりという他の学校の仲間はいた。そんな例を実際に見たり聞いたりしました。

 高校のチームメートで、いま、日本代表主将の荒木絵里香(現・トヨタ車体)は「大学に行く」と言っていたけれど、最終的に選手としてのキャリアを重要視してVリーグ行きを決めました。「大学は後からでも通える」と。その過程で先生による強制はなく、絵里香が自ら決めたということが印象に残っています。

 学校やチームのことが優先されると「お前はここに行け」となるけれど、選手にとって、どこに進めばベストなのか、を先生は考えてくれていました。

 高校に上がる時も、その先生の指導方針が自分に合っていると思ったから迷いはなかった。いいところを伸ばし、自信を持たせてくれる先生でした。欠点については、自分自身が改善しようと気づくまで待ってくれた。おかげでバレーを嫌いになることはありませんでした。

 日本代表では、ミスすれば怒られ、欠点を指摘され、ということがすごく多かった。「加奈はレシーブが下手でダメだ」と。自信を失い、心身ともに追い込まれ、何のためにバレーをしているのか分からなくなってしまった。すると、ミスしないように、怒られないようにというマインドになる。うまくなりたい、強くなりたい、という思いが消え、すごく苦しかった。

 結局、乗り越えることはできませんでした。けがもして、フェードアウトするように引退しました。

引退してから痛感「勉強は競技にもつながる」

 勉強は絶対にした方がいい。ス…

【10/13まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment