孤独死の現場も異変…コロナで遅れる発見 特殊清掃業の女性、感じたぬくもり(西日本新聞)

特殊清掃業社長 江田梢さん(32)

 だだっ広い無人のオフィス。清掃用の布きれに消毒液を染み込ませ、丹念に拭く。机、パソコン、コピー機、ドアノブ。コの字拭きせず一方向に拭き、一拭きごとに清潔な面に変える。全身を包む防護服や防毒マスクの重装備はもう慣れたが、やはり息苦しく暑い。汗が絶えず噴き出し、水をかぶったように防護服の中をだらだらと流れ落ちる。 【写真】特殊清掃業「NICObit」の社長・江田梢さん  大分市の特殊清掃業「NICObit」は女性ばかり10人の会社だ。2016年の設立以来、主に孤独死や火災などの現場の清掃、消毒、遺品整理を請け負う。新型コロナウイルス感染拡大後、患者が確認された事業所から消毒の依頼が舞い込むようになった。これまでに約40件。現場は大分県内はもちろん、福岡市など北部九州一帯に及ぶ。  3月21日には同業仲間の要請を受けて神奈川県の横浜港へ飛び、集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に従業員2人とともに乗り込んだ。全長290メートルの船内は防護服姿の作業員であふれていた。未知のウイルスに対しさまざまな情報が錯綜(さくそう)していた時期。正直、怖かったが、巨大な現場に奮い立った。元請けの米国企業に最新の消毒技術を学び、5日間、夢中で働いた。歩数計は連日2万歩を超えた。

呼ばれる現場の職種はさまざま

 呼ばれる現場の職種はさまざまだ。飲食店、工場、保育園、高齢者施設。「店にたくさんの客が出入りするから」と予防的な消毒の依頼も少なくない。  一方で、多くの依頼者は「周囲に知られたくない」と配慮を求めてくる。消毒作業中、他のテナントの従業員たちに気づかれないよう人が通るたび壁際やトイレに隠れて何度もやり過ごした。ウイルスも恐ろしいが、差別も恐ろしい。  現場を踏めば踏むほど、誰がいつ感染してもおかしくないと思う。感染者が身内から出た場合の影響の大きさも痛感する。自分たちも例外ではない。休憩のたびに防護服を新しく替え、靴裏まで消毒を欠かさない。従業員の感染者は今のところゼロ。今後も出すつもりはない。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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