宣言下の共通テストは異例の態勢 座席離し、昼食は自席

 初めての大学入学共通テストが16、17の両日行われ、全国の681会場で約53万5千人が一斉に試験に挑む。コロナ禍で11都府県に緊急事態宣言が出る異例の状況下での実施。家族の感染などで濃厚接触者と特定された受験生が、行政のPCR検査を受けられない事態も相次いでいる。

 共通テストは31年続いた大学入試センター試験に代わるもの。センター試験より、思考力・判断力・表現力が試され、英語の配点はリーディング(筆記)よりもリスニングの比重が高くなる。全体的に難しくなるとみられている。

 大学入試センターによると、濃厚接触者の受験生は自治体など行政のPCR検査を受け、陰性と判定された上で、無症状などの条件を満たせば別室で受験できる。だが、検査を受けていない場合や検査結果が判明していない場合は受験できない。

 センターには15日までに「行政のPCR検査を受けられない」など数十件の相談が寄せられた。感染者増で検査が追いつかない保健所があるためとみられる。センターは「受験票記載の『問合せ大学』に連絡し、追試の受験申請を」と呼びかける。

 首都圏の公立高校の校長は「行政検査がパンク状態なのに、なぜ一般の医療機関などの検査結果は活用できないのか。子どもの人生がかかっているのに『追試があるからいいでしょ』では、かわいそうすぎる」という。

 この高校では、1月に入り、ほぼ毎日、「家族が陽性」「生徒がPCR検査を受ける」などの連絡が入るようになった。だが、保健所によっては検査を受けるまで数日待たされ、結果も即日は出ないところが多い。検査の待機状態が続いて困っている状況を、周囲の高校からも聞いているという。

5人がけの机の両端に

 首都圏では高校生らの感染者も急増。東京都教委によると、学校が再開された昨年6月以降の都立学校の児童・生徒の累計感染者数は今月14日時点で約570人、うち約半数が昨年12月26日以降の感染者だ。共通テスト以降も、私大や個別入試、高校一般入試と続く。「入試が終わった後になって、『陰性でした』といわれる受験生の気持ちも考えて欲しい」という。

 コロナ禍をうけ、試験会場は徹底した感染防止策が取られる。

 文部科学省のガイドラインでは、受験生の座席間隔は1メートルほど離し、マスクの着用と入退室時のアルコール液などによる手指消毒が義務づけられた。換気は少なくとも1科目ごとに行い、昼食は自席でとるように指示されている。

 受験生に発熱やせきなどが出た場合には、待機している医師や看護師が9項目のチェックリストに沿って症状を確認し、該当者には追試験を案内することもある。

 会場になる大学では15日、準備作業が行われた。約900人が受験する上智大(東京都千代田区)では清掃業者が机の上を消毒し、職員が受験番号の書かれたシールを貼った。ソーシャルディスタンスを保つため、5人がけの机の両端に受験生を座らせる配置にした。

 各教室の前には手指を消毒するためのアルコール液を設置し、入室のたびに消毒するよう呼びかける。トイレは、混雑回避のために1メートルの間隔をあけて並ぶようテープを貼り、一方通行で使う動線にした。

 これまでは大学の独自の個別試験のみをしていたが、今回初めて共通テストを入試に利用する。のべ186人の教職員で監督や運営にあたる。入学センターの飯塚淳・事務長は「環境はきちんと整えているので、安心して受験して欲しい」と話した。

 2千人余りの受験生を迎える専修大生田キャンパス(川崎市)では、15日朝から、例年より多い約50人の職員が会場設営の作業をした。前日までに机や椅子の消毒を済ませた38の試験室すべてに、手指用の消毒液を置き、廊下には入念な手洗いなどを呼びかける貼り紙を掲示した。

 密を避けるため、例年は1部屋用意する救護室を3部屋に分散。また、体調不良になった受験生が待機する「個室」として、ゼミ部屋を20室以上用意した。

日本海側で天気が崩れる見込み

 試験監督者を務める教職員は2日間で計200人余りだが、監督者が体調を崩したり、体調の悪い受験生への対応が必要になったりする事態を想定して、数十人の教職員が予備要員として会場に待機するという。

 共通テストの初日となる16日は北日本から西日本の日本海側で天気が崩れる見込みで、北海道では日本海側で猛吹雪になる恐れがある。太平洋側はおおむね曇りや晴れの見込み。北海道や東北、関東では気温が上がり、4月上旬並みの陽気となりそうだ。

 気象庁が15日午前に発表した予報によると、16日の予想最高気温は、東京都心が19度と4月中旬並み。札幌6度、仙台12度、宇都宮16度など、各地でいずれも4月上旬並みの予想だ。名古屋13度、大阪14度、広島14度と、東海や近畿、中国では3月中旬並みと予想されている。

 テスト2日目の17日は北日本から西日本の日本海側で引き続き雪や雨が予想されている。太平洋側では曇りや晴れのところが多い。気温は一転、全国的に真冬の寒さに戻る見込み。予想最高気温は、東京都心で16日より10度低い9度。各地で5度以上低くなる予想で、寒暖差に注意が必要となる。


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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