審議1回…枝野氏が阻む改憲議論 自民は参院選で争点化の構え(産経新聞)

 今国会での憲法改正議論は、衆院の憲法審査会で1度実質的な審議が行われただけで、具体的な成果に乏しいまま26日の会期末を迎えようとしている。議論が進まないのは、憲法審の与野党の責任者が日程協議で歩み寄っても、立憲民主党の枝野幸男代表がストップをかけたからだ。自民党内には、夏の参院選で議論を阻む野党第一党の姿勢を争点化する動きがある。(田中一世)

 今国会では5月9日、衆院憲法審で約1年半ぶりに実質的な審議が行われたが、憲法改正の是非を問う国民投票の際のCM規制のあり方に関し、日本民間放送連盟(民放連)幹部の参考人質疑を実施したにすぎない。自民党の独自改憲案などを議論する「自由討議」は開かれず、参院では憲法審そのものが一度も開かれていない。

 与党は21日、参院で26日までに自由討議を行うよう野党に提案したが、見通しは暗い。

 与党側は5月9日以降の衆院憲法審で、棚ざらしになっている国民投票法改正案の質疑と採決を行う考えだった。改正案は昨年6月に提出され3国会目を迎えたが、立憲民主党は今国会も最後まで質疑や採決を認めなかった。

 実は、与野党の憲法審幹事は一時、改正案の採決日程で折り合っていた。与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)と野党筆頭幹事の山花郁夫氏(立憲民主)は5月17日、「翌週の23日に改正案の質疑と採決を実施した後、野党側が要求しているCM規制の議論に速やかに移る」との方向性を互いに確認した。

■与野党協議で歩み寄りも一転破談に

 しかし、山花氏は週が明けると「採決に応じられない」と姿勢を一転させた。枝野氏の決裁が下りなかったからだ。その後も、山花氏が採決の許可を求めても枝野氏は首を縦に振らなかった。日程協議をする幹事懇談会は異例の13回を数えたが「中身は毎回同じ。違うのは(提供される)弁当の中身だけ」(自民党幹事)という状況が続いた。

 新藤氏は「最後に枝野氏がひっくり返し、山花氏も困り抜いている。憲法審は党首1人の意向で全く動かない」と批判する。

 枝野氏が求めているのは、自身の参考人招致を含むCM規制に関する議論を優先することだ。与党側は「遅延戦術」とみる。枝野氏は、首相が出席する衆参予算委員会の開催に応じない与党の姿勢を批判するが、定例日の憲法審に応じず、重要課題があれば臨時に開く予算委を主張するのは矛盾している。

 自民党幹部は「こちらが譲る必要はない。向こうの議論拒否は国民の反感を買う」と強調する。「衆参憲法審で国民のための論議を丁寧に深める」との公約を掲げる参院選に勝利すれば、世論の後押しで秋の臨時国会で議論進展の道が開ける可能性がある。

 安倍晋三首相は10日の参院決算委員会で、参院選の論戦を念頭にこう語った。

 「憲法審査会は予算(事務局経費など)もかかっている。『議論すらしないのはどうか』ということを、いずれ国民が判断することになるのだろう」

■改正案の内容には与野党異論なし

 そもそも、憲法審の焦点となっている国民投票法改正案は、与野党がもめるたぐいの法案ではない。

 改正案は駅や商業施設への「共通投票所」設置や、遠洋航海中の人の洋上投票を認めるなど計7項目を盛り込んでいる。国民投票の利便性を、国政選挙や地方選挙と同じ内容にそろえる「制度の整備」で、内容には与野党とも異論はない。

 与党などが提出し、立憲民主党も合意した上で昨年7月に審議入りした。

 しかし、枝野氏が5月9日の衆院憲法審で、突然、現行の国民投票法には欠陥があると「そもそも論」を訴え始めた。民放連は国民投票でのCM量の自主規制を行わない方針を示したが、枝野氏は「19年の現行法制定はCM量を自主規制することが前提になっていた」と主張する。

 野党も反対しないはずの法改正議論を呼び水に、改憲議論の膠着(こうちゃく)状態を打開する-。こうした与党側の思惑は外れた。日本維新の会の馬場伸幸幹事長は今月12日の記者会見で「与党は妨害工作にずるずるとお付き合いするのか。どこかの段階で決断し、議論を始めなければ税金の無駄遣い」と語り、与党側に覚悟を持つよう迫った。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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