導入時の担当者に聞く、性教育の「はどめ規定」 当時懸念したのは…

 国内外から遅れが指摘される日本の学校での性教育。その障壁として指摘されるのが、学習指導要領の「はどめ規定」だ。中学の保健体育では「受精・妊娠までを取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする」としているこの規定は、1998年度の指導要領改訂時に盛り込まれた。現場では、性交を教えない規定だと捉えられている。なぜ、この規定が必要だったのか。山形県の公立小中学校で教員として教壇に立ち、文部省(当時)の教科調査官としてこの改訂に携わった戸田芳雄・前日本安全教育学会理事長は「規定の目的は学習内容の整理だった。『はどめ』をかけた覚えはない」と語る。

 ――中学の保健体育で「妊娠の経過は取り扱わないものとする」とした、いわゆる「はどめ規定」。98年の改訂で、なぜ盛り込まれたのでしょうか。

 当時は文部省の教科調査官の立場で「規定」を入れることに携わりました。

 その頃、性教育に関しては「もっとしっかり教えるべきだ」という推進派から、「若者の性が乱れる」との反対派まで、社会に様々な意見があり、それぞれが強く主張していました。文部省にも、意見や批判が届きました。

 98年の改訂は非常に難しいものでした。かつての詰め込み教育の反動から、後に「ゆとり教育」と呼ばれる新課程を作らなくてはならず、授業時間数が大幅に削られました。中学の保健体育も例外ではなく、保健分野は55時間から48時間程度に減少しました。当時は「精選」という言葉がよく使われ、それまであった、教科や学年の間で学ぶ内容の重複を避けることが重要な課題でした。

 一方で、健康課題として、ストレスへの対処法など心の健康に関することや阪神大震災(95年)の教訓からの防災教育、HIVなどの性感染症の予防などが、保健分野の新たな課題として上がっていました。授業時間数が減る中、この三つの重要な要素を盛り込まなければいけない。学習指導要領はあくまで、「これだけは学習する」という最低基準。あまり内容を盛り込みすぎないようにするのが大前提です。

 性教育をすること自体は良いと思いますが、教科の目標や内容、授業時間数を考慮すると、保健という教科で全てを教えるわけにはいかないと考えました。理科や社会科、家庭科が担う部分もあり、重複することはできない。保健では、身体の発育以外の内容が広がりすぎないように、と考えました。

 ――取り扱わない項目が、「妊娠の経過」だったのはなぜなのでしょうか?

 当時、教職員への聞き取りや…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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