市立保育園のゆくえなど巡り論戦 東京・小金井市長選あす投開票

 東京都小金井市長選は27日、投開票される。立候補したのは、いずれも無所属新顔で元市議の白井亨氏(47)と共産党地区委員長の小泉民未嗣(たみじ)氏(44)=共産推薦。西岡真一郎前市長が退く原因となった市立保育園2園廃止への対応などを巡り、論戦を交わしている。

 西岡氏は9月、市立5園中の2園を来春から段階的に廃止する条例改正を専決処分で決めた。市議会はこれを不承認(反対20、賛成2)とし、西岡氏は「責任を取る」として辞職した。ただ処分の効力は変わらず、市は対象2園で来春の0歳児募集をしていない。

 白井氏は、この専決処分について「違法性が指摘されている」と説明。「速やかに条例改正し、廃園前に戻す」と公約する。市が昨年定めた廃園関連の方針も撤回して、有識者や市民を交えた審議会を作り、「市立園の役割とあり方を検討する」との進路を示す。

 一方で市立園存廃を巡る自身の考えは「結論を持っているわけではない」と説明。民間園を含めた市内全体の保育の質向上のために、必要な市立園の数を検討していくとしている。

 小泉氏も今回の専決処分については「直ちに撤回」と公約する。この部分の主張は白井氏と共通する。

 異なるのは、市立5園全てを「守っていく」と明確にしている点だ。全園を維持するという選択肢を有権者に示すのが、立候補の主な動機だとも説明する。専決処分を撤回した後については、2園での0歳児募集を速やかに再開するとの考えも表明。障害児や外国籍の子への対応など、多様な保育ニーズに応えるためにも、民間も含む多様な受け皿が必要だと訴えている。

 他に長年の懸案である新市庁舎建設計画の適否などを巡っても論戦が続く。投票は市内20カ所で午前7時~午後8時。この日は市議補選(被選挙数2)も投開票される。19日現在の選挙人名簿登録者数は、10万4104人。

元園児の保護者「保育のあり方、議論ができるように」

 「これまで市は、行革ありきの廃園で一方通行だった。対話をきちんとできるようになってほしい」。廃園対象の市立園に、4人の子を通わせた会社員男性(50)は言う。元園児の保護者として、市立5園の現役の父母とともに市の廃園方針の見直しを求めてきた。

 昨年7月、市は5園中3園を廃園対象とし、うち2園を先行して廃止する方針を示した。理由に挙げたのは市立園の運営経費の高さや、老朽化に伴う建て替え費用の重さ。財政上の理由ばかりが強調されていると感じた。市全体の「保育の質」の維持・向上には、蓄積のある市立園が果たす役割はあるはず。その議論を重ね、市立園の存廃を考えるよう求めたが、前市長時代にはかなわなかった。

 今回の市長選。2人の候補者はともに、2園を廃園とする前市長の専決処分を取り消し、元の条例に戻すという点では共通する。だがその先の道行きは、各候補で色合いが異なる。

 子どもの数が減り、市内でも保育園の定員割れが起きつつあるなか、市立園も定員数の見直しなど、今後の方向性を描き直す必要がある、と男性はみる。「この機会に、小金井としての保育のあり方の議論ができるようになってほしい」と願う。井上恵一朗

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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