強制不妊、国に賠償命じる判決 初めて実名公表の男性、全国6例目

 旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で、不妊手術を強制されたのは違法だとして、札幌市の小島喜久夫さん(81)が国に損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、札幌高裁であった。大竹優子裁判長は「人権侵害は強度で、国は違法な施策によって障害者への根強い差別や偏見を正当化し、助長してきた」として、国に1650万円の賠償を命じた。

 争点は、損害があっても20年が経つと請求権がなくなる「除斥(じょせき)期間」を適用するかどうかだった。今回の判決は「除斥期間を適用することは、著しく正義・公平の理念に反する」と判断した。

 小島さんは2018年5月、全国で提訴が相次いだ一連の訴訟で、初めて実名を公表して提訴した。同種訴訟で原告勝訴の判決は6例目。

 訴状によると、小島さんは19歳ぐらいだった1960年ごろ、医師の診断なしに精神障害として入院させられ、手術を強制された。

 21年1月の一審・札幌地裁判決は、旧法が幸福追求権を保障した憲法13条▽法の下の平等を定める14条▽家族に関する制度の立法について個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚することを求める24条に反すると認定した。

 しかし、小島さんの訴えは退けた。損害があっても20年が経つと請求権がなくなる「除斥期間」を根拠に、手術を受けてから約60年が経過した小島さんに請求権がないと結論づけた。

 控訴審では同年12月の意見陳述で、「病院から、手術が国の指示だという説明を受けなかった。18年1月、仙台地裁に全国で初めて『優生手術』の被害者が裁判を起こしたとニュースで見て、初めて手術が国の不法行為と知った」と訴えていた。

 同種訴訟では、大阪高裁で昨年2月、全国で初めて国に賠償を命じる判決が出た。判決は、被害者らが国の不法行為を受けたと認識できないまま、除斥期間が過ぎて賠償の権利がなくなるのは「著しく正義・公平の理念に反する」と判断。同種訴訟の提起を知ってから6カ月以内は、除斥期間の効果が生じないとした。

 翌3月には、東京高裁でも除斥期間の適用を制限し、国に賠償を命じる判決が言い渡された。

 その後、各地で同様の判決が相次いでいる。今年1月には熊本地裁が、そもそも除斥期間を適用しないとして国に賠償を命じる判決を言い渡した。被害の大きさや、国が手術を積極的に進め、偏見・差別を広めた責任の重大さなどを理由に挙げた。2月には静岡地裁、今月6日には仙台地裁で原告勝訴の判決が出た。

 旧優生保護法は「不良な子孫の出生防止」の目的で、戦後間もない1948年に成立。障害がある人などに対して、本人の同意がなくても都道府県の審査会が認めれば不妊手術を行えるようにした。

 厚生労働省によると、強制不妊手術の条項を削除して母体保護法に改正される96年までに、全国で少なくとも1万6475人が手術を受けさせられたとされる。(平岡春人)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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