感染拡大 専門家、政府の指標案に注文「方向、明確に」

 新型コロナウイルスの感染状況を分析し、対策を厚生労働省に助言する専門家組織(アドバイザリーボード)の会合が30日開かれた。感染者の報告は東京だけでなく、都市部を中心に全国的に増えている。全国の感染者数は一日1千人を超え始めるなど、感染拡大に歯止めがかからない状態だ。

 政府は5月、緊急事態宣言解除の基準の一つに「直近1週間の新規感染者数が人口10万人あたり0・5人程度以下」をあげていた。朝日新聞の集計によると、これを超えていたのは、22日までの1週間は27都道府県だったのに対し、29日までの1週間は34都道府県に増えた。一方、これを下回るのは東北や四国の一部などに限られる。

 同じ期間に、全国の感染者のうち東京都が占める割合は約4割から約3割に低下。その分、大阪や愛知、福岡、沖縄などの割合が増えている。

 関係者によると、会合では感染状況を3段階に分けて対応する案が議論された。爆発的な感染拡大が起きて医療が機能不全になる最も深刻な段階になるまでに、重症者の病床数や60歳以上の感染者数などで段階を判断し、必要に応じて緊急事態宣言を出すことなどを検討している。

 判断の材料となる指標をみると、感染状況に改善の兆しは見えない。

 60歳以上の感染者は、東京都では8日までの1週間は49人だったが、29日までの1週間は157人に増加。同じ期間に大阪では4人から105人、愛知では0人から42人、福岡では8人から44人にそれぞれ増えた。

 重症者数はどうか。厚生労働省が集計している全国データを基に15日時点と22日時点で比べると、この間に重症者数が増えたのは埼玉や千葉など6都府県。東京、大阪ではその後も増加が続き29日時点で、東京の重症者数は22人、大阪は16人となっている。

 また、病床利用率は15日時点と22日時点で比べ、37都道府県で増加。そのうち、5ポイント以上増えているのは16都府県あった。利用率が40%を超えた埼玉、20%を超えた大阪、愛知、福岡などでは1週間で10ポイント以上増えるなど、都市圏を中心に徐々に医療現場の負担が増している。

 観光業への支援策「Go To トラベル」は東京発着の旅行を対象外にするなどして22日に始まった。だが、全国的に感染が広がるなか、夏休み本番の8月を迎え、人の移動が活発になる可能性がある。

 順天堂大の堀賢教授(感染制御学)は「政府が強調していた『新しい生活』が完成しない中で、色々なことが前のめりに始まっていることが問題だ。何をするとリスクが高くなり、どうすれば対処できるのかについて具体的な解釈が不足しているので、市井の生活に落とし込んでいけていない。改めて今後の国全体の方向性と具体的に国民に期待する行動を明確に発信して、理解を深めてもらうべきだ」と指摘する。(市野塊、合田禄、月舘彩子)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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