戦争で故郷追われる人々は今も 写真家がたどるルーツと記憶の旅

時津剛

 「北方領土の日」の2月7日を前に、歯舞群島にルーツをもつ写真家が、写真展「島々の記憶 ~故郷への想い、巡る旅~」(富士フイルムフォトサロン札幌、2月3~8日)を開く。色丹島や国後島など北方領土の元島民20人のポートレートや島の風景など、約40点を展示する。

 東京都在住の山田淳子さん(40)。出身地の富山県には元島民が暮らす地域があり、5年前に、北海道釧路市に住む親類から、歯舞群島の志発島で曽祖母が5人の子どもを育てたという話を聞き「島を見たい、自分のルーツを知りたい」と思うようになったという。2019年にビザなし交流で色丹島を訪れたことを皮切りに、これまで北海道や富山に住む元島民40人を訪ね歩き、写真とともに証言を記録してきた。

 2020年以降、コロナ禍で島に上陸できない状況の中、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。色丹島の元島民がつぶやいた「昔、ソ連兵が島に入ってきた時と重なる」という言葉が心に残る。「国家や戦争に翻弄(ほんろう)され、故郷を追われる人々がいるのは昔も今も変わりません」

 終戦から78年。ロシアによる実効支配は続き、元島民の平均年齢は80代後半に達する。「死ぬ前にもう一度島を見たい、島のことを知ってほしいという人たちがいます。これからも多くの元島民に会って話を聞き、その思いを伝えていきたい」。自身のルーツに思いをはせながら、島々の記憶を巡る旅を続けるつもりだ。(時津剛)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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