控訴審で示された「アナザーストーリー」 工藤会死刑判決への影響は

 四つの市民襲撃事件で殺人罪などに問われた特定危険指定暴力団工藤会北九州市)のトップで総裁の野村悟被告(76)=一審死刑判決=と、ナンバー2で会長の田上(たのうえ)不美夫被告(67)=同無期懲役判決=の控訴審第1回公判が13日、福岡高裁(市川太志裁判長)であった。弁護側は「直接証拠が全くないにもかかわらず、『推認』に『推認』を重ねた」と一審判決を批判、検察側は「一審判決は工藤会の実態に即し、合理的だ」として控訴棄却を求めた。

 両被告は黒のスーツを着て出廷。それぞれ裁判長から名前を聞かれ、はっきりとした声で答えた。

 起訴状などによると、両被告は1998年の元漁協組合長射殺事件、2012年の元福岡県警警部銃撃事件、13年の看護師刺傷事件と14年の歯科医師刺傷事件に関与したとされる。

 野村被告側は、一審に続き、すべての事件で無罪を主張した。弁護側は、射殺事件について工藤会の別の組員らが首謀したと指摘。両被告に動機はなく、関与もしていないとした。元警部の事件についても、当時ナンバー3の男が独断で首謀したとした。

 一方、二つの刺傷事件について、田上被告が一審から一転して関与を認めた。弁護側は「野村被告を巻き込まないよう相談せず独断で指示した」とし、「野村被告の意思決定によるものと推認できる」とした一審判決が誤りであると主張した。

 検察側は、「厳格な統制がなされていた暴力団組織の中で、両被告の共謀によって犯行が遂行されたと認定した一審の判断に不合理な点はない」などと反論。田上被告の主張変更は「トップの刑事責任を免れさせようとする強い動機があり、信用できない」とした。

 弁護側は、約150点の証拠の取り調べと両被告をのぞく34人の証人尋問を請求し、高裁はこのうち3点の書証と1人の証人尋問を採用した。次回期日は27日で、両被告の被告人質問が予定されている。

「推認」多用で死刑判決、割れる評価

 四つの市民襲撃事件で一審の…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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