教育委員と教科書会社の接触で「ゆがめられた」 第三者委が報告書

 大阪府藤井寺市立中学校の教科書選定を巡る汚職事件を受け、市教育委員会が委嘱した第三者委員会は29日、調査報告書を浜崎徹教育長に答申した。選定に関わった教育委員らが教科書会社「大日本図書」(東京)の社員らと接触したと認定したうえで、「教科書の採択手続きがゆがめられた」と結論づけた。

 報告書によると、市教委は2021年度から中学校で使う教科書16種類を選ぶため、20年4月に中学校の校長など9人を選定委員に任命し、中学教諭37人を調査員に選んだ。調査員作成の資料をもとに選定委員会が候補を答申し、教育委員4人と教育長の投票で同年7月に教科書を決めた。

 数学、理科、保健体育で候補となった同社は、選定委員だった当時の中学校長(61)=加重収賄などの罪で有罪確定=と教育委員2人、調査員2人に、当時の取締役や社員=いずれも贈賄罪で略式命令=が接触した。

 元校長は取締役と学校教育課長だった11年ごろに知り合い、会食やゴルフをするなど関係を深めていた。20年の教科書選定では、同社に有利な発言をすることや教育委員を紹介する場を設けると約束。現金3万円を受け取ったほか、飲食やゴルフの接待を受けた。

 教育委員1人は元校長とともに社員と会食し、同社の教科書の優位性を説明する資料を渡された。別の教育委員は自宅で社員から資料の説明を受けたほか、前年には社員、取締役、元校長の計4人で会食した。

 教育委員2人は会食の事実を認め、今年2月に辞職している。

 保健体育担当調査員の教諭も社員から説明を聞いた。この教諭は元校長の教え子で、元校長と社員のゴルフに同行したことがあった。理科担当調査員の教諭は説明を断った。

 教科書を選ぶ投票は7月30日にあり、同社と接触した教育委員2人だけが、同社が候補となった数学、理科、保健体育でいずれも同社に投票した。会議中の発言も同社の資料に沿った内容だった。数学と保健体育は同社の教科書が選ばれた。

 第三者委は再発防止策として、選定手続き期間中に教科書会社と教育委員や教員ら関係者との接触を一律に禁止し、内外に発信することなどを挙げた。

 記者会見した畠田健治委員長(弁護士)は、今年に入って委員3人が関係者22人にヒアリングしたが、元校長は応じなかったと説明。元校長と社員による飲食やゴルフを以前から知り疑問を感じていた関係者もいたとして、「不安なく通報できる仕組みをつくり、周知すべきだ」と話した。

 答申を受け、浜崎教育長は「厳しいご指摘や具体的な改善策の提言をいただいた。真摯(しんし)に受け止め、努力していきたい」と話した。(森嶋俊晴)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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