教育委員の経験者が見る「9月入学」 導入の前に考えるべきこと(47NEWS)

 子どもたちは今、新型コロナウイルスの影響で本来受けるべき教育をきちんと受けられていません。オンライン授業の導入などが進む学校と、進まない学校、また休校が続く地域と既に再開している地域との間で学力格差が広がることが心配されています。

 そこで浮上したのが「9月入学」への移行案です。学習の遅れを取り戻すのが狙いで、教育関係者や保護者、生徒たちの間で関心が高まり、最近では政治家らの発言も目立ちます。ここでは学校教育法などの小難しい話はいったん置いて、教育委員の経験者として、また子を持つ親として、9月入学導入のメリットとデメリットを考えてみたいと思います。(元豊中市教育委員会委員=山名貴志)

 ▽立ちはだかる課題、得られる果実

 まずはメリットを三点挙げてみます。

 一つ目は、入学や始業時期を9月にずらすことで、一斉休校で遅れている学習内容を含めて、しっかり学ぶことができる点です。遅れを取り戻すための方策として、夏休みの短縮や土曜授業の実施なども議論されています。このように現行の4月入学、始業を前提に対処しようとすれば、そのしわ寄せは子どもたちに負担となる可能性があります。教員の過労にもつながりかねません。

 二つ目は、欧米など他の多くの国のように、9月を学びのスタート地点にすることで、グローバル化に対応できる点です。日本から海外に留学する学生にとっては、約半年のタイムラグがなくなり利便性が増し、学びが充実すると考えられます。海外から日本に留学する学生も同様でしょう。

 最後に、インフルエンザや降雪などが受験の妨げになる“冬季リスク”の軽減です。これに関しては、受験が夏になったところで豪雨や台風の心配はあるし、どちらとも言い難い面はありますが。

 それでは、デメリットはなんでしょう。経済インフラと社会インフラの混乱に尽きると思います。

 経済面では、就職活動に大きな影響が出ることが考えられます。国際化の観点から語られることが多い9月入学ですが、就職に際してはグローバル化にはほど遠い「新卒一括採用」がいまだ慣習として残っています。国が若者の留学を後押して国際化を進める一方で、就職活動になると「よーいドン」となってしまうのはどうなのでしょうか。


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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