数十万人規模の広域避難、災害前に国が調整 法改正方針

 台風などで浸水被害が想定される場合に、数十万人規模の広域避難を円滑に実施するため、政府は、自治体や交通・インフラ事業者などに必要な指示や協力依頼をできるよう法改正する方針を固めた。12日で上陸から1年になる昨年10月の台風19号では広域避難の課題が浮かび、対応策を検討していた。

 政府は、来年の通常国会に災害対策基本法の改正案を提出する構え。これまで災害が起きた後にしか設置できなかった「非常災害対策本部」を発生前に設けられるようにする。想定外の事態で自治体の対応にばらつきが出た場合などに、政府が事前の調整に乗り出せる態勢をつくる。

 念頭に置くのは、大都市圏で数十万人以上が都道府県や市区町村をまたいで事前に避難するケース。昨年10月の台風19号では、東京23区のうち、東部の5区でつくる協議会が、住民約250万人を対象に広域避難の実施を検討した。

 だが、検討を始めた時点で首都圏の鉄道の計画運休が決まっていたため、住民の移動は困難な状況だった。また協議会は、河川の氾濫(はんらん)が想定される72時間前に予測雨量が基準に達していた場合、広域避難の検討を始めると決めていた。だが19号時は、48時間前になって予測雨量が基準に達した。このような場合の対応を事前に想定していなかった。

 こうした状況を受け、多くの住民をどんな手段で移動させるかや避難先の確保といった課題も含めて、内閣府の作業部会が検討を開始した。作業部会では今後、避難先の確保や、広域避難をした場合に関係機関がどう連携していくかなどを検討し、年内に最終報告をまとめる。(山岸玲)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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