旧優生保護法は違憲 神戸地裁「差別解消を期待」と付言

岩本修弥

 憲法違反の旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下、聴覚障害や脳性小児まひを理由に不妊手術を強いられたとして、兵庫県に住む5人が国にそれぞれ1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3日、神戸地裁であった。小池明善裁判長は、国会議員が旧法の条項を改廃しなかったのは違法だとする初めての判断を示した。旧法は憲法13条、14条、24条に違反するとも指摘したが、手術から20年が経過した除斥期間を理由に請求を棄却した。

 小池裁判長は「特定の疾病や障害を有することを理由に心身に多大な苦痛を受けた多数の被害者に必要かつ適切な措置がとられ、障害者への偏見や差別を解消するために積極的な施策が講じられることを期待したい」と付言した。

 旧法をめぐっては、全国の9地裁・支部で計25人が訴訟を起こした。2019~21年、仙台、東京、大阪、札幌の4地裁が計5件の判決を言い渡し、手術から20年の除斥期間の経過などを理由に原告の請求を退けた。ただ、うち3件は旧法の不妊手術の規定を憲法違反と判断しており、6件目の判決となる神戸地裁の判断が注目されていた。

 神戸地裁に訴えたのは、聴覚障害者の小林喜美子さん(88)と夫の宝二(たかじ)さん(89)▽聴覚障害のある80代男性(2020年11月に死去)と妻▽脳性小児まひの鈴木由美さん(65)。

 訴状などによると、喜美子さんは結婚した1960年に妊娠。実母に病院に連れて行かれ、不妊手術を強いられたという。80代男性は結婚直前の68年ごろ、鈴木さんも12歳だった同年ごろ、それぞれ不妊手術を受けさせられたという。

 原告側は、不妊手術の規定は、子を産み育てる自己決定権を保障する憲法13条などに違反すると主張。国は差別意識を根付かせ、被害回復もしなかったとし、除斥期間の適用は道理に反するなどと訴えた。

 一方、国側は、手術から20年の除斥期間がたっており、損害賠償を求める権利は消えたと主張。国家賠償法とは別に救済措置を講じていなかったことも違法とはいえないなどとし、請求を退けるよう求めていた。(岩本修弥)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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