明治用水ひとすじ30年の学者は見た 「田植えの遅れで2割減収も」

 愛知県豊田市の取水施設「明治用水頭首工(とうしゅこう)」で起きた大規模漏水問題。この明治用水を約30年にわたって研究している名古屋大大学院の三浦聡助教(食料経済学)は、「田植えの時期がずれれば、計画が崩れるだけでなく、台風や気候の影響も受けやすくなる。少なくとも1~2割の減収が見込まれる」と指摘します。

 問題の背景や、今後の復旧について、話を聞きました。

 ――今回大規模な漏水を起こした明治用水頭首工ですが、さまざまな問題が指摘されています。

 現在の頭首工が完成したのは1958年。補修はあったにせよ、60年以上経過した施設の「老朽化」はずっと前から指摘されていました。

みうら・さとし 1963年生まれ。名古屋大大学院生命農学研究科食料経済学研究室所属。大学院生だった1992年ごろから、明治用水管内の自治体や農家の調査、研究を続けている。主な研究テーマは、「農業・農村の地域資源管理手法に関する研究」。

 頭首工の改築は、大型予算が必要であることに加え、水をせき止めて代替水路を用意しないと工事はできません。この施設は、農業、工業、上水を取水するための施設であり、難しい問題を抱えています。

 農業用水路については、本線・支線の改修工事は破損や漏水などの発生に応じてやってきました。今回は、矢作川の本川から取水する施設での漏水。大規模に水が抜けるというのはあまり聞かない話です。

 ――仮設ポンプの設置やほかの河川からの水のくみ上げなど、問題が起きてからの国や行政などの対応をどう見ますか。

 「緊急避難的にこれしかない…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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