柔和な横路さんが厳しい顔に 記者に語った平和のこと、アイヌのこと

 「北海道を振り返ることなら私にもお役に立てることがあるかな」

 衆院議員を引退した直後の2017年秋、北海道知事衆院議長を務めた横路孝弘さんにインタビューを申し込んだ。最初は「引退した身だから」と乗り気ではなかった。だが、「北海道150年」の企画であることを伝えると、「先に言いなさいよ」と快諾してくれた。

 「話したいことが山ほどあって大変だった」

 取材当日、そう言って迎えてくれた横路さんの手元には、取材のために用意した自作の資料があった。

 横路さんにお願いしたインタビュー企画「わたしと北海道 150年」では、北海道の重大事件を五つ選んでもらっていた。「とても絞り込めない」と悩んだ結果、横路さんが選んだのは「アイヌ民族」「戦争」「教育」「災害」「交通」の5つのテーマだった。

 インタビューでは、多くの時間を歴史認識に費やした。横路さんは冒頭、「150年」に疑問を突きつけた。「なぜ150年なのか。この地には先住民族としてアイヌの人たちがいた。そのことを忘れてはいけない」

 自身も政治家になるまでアイヌの人たちを意識することはなかったと告白した上で、「アイヌの人たちとの関わりが歴史と向き合う大きなきっかけになった」と話した。

 戦争についても体験を交えて熱く語り、これからの北海道に大切なこととして「まず平和であること」と言葉に力を込めた。

 取材が終わると、「本当は憲法についても話したかったのだが、長くなるから君たちも困るだろう」と笑顔を浮かべた。その後の言葉が印象的だった。

 「平和のために歴史を見つめる。これからの北海道を担う人たちに、うまく伝えておいてください」

 横路さんは2日、肝内胆管がんのため、都内の病院で死去した。82歳だった。(長谷川潤)

5年前、熱く語った北海道

 2018年1月12日付朝日新聞北海道版に掲載された「わたしと北海道 150年」の横路孝弘さんのインタビューは次の通り。

 まず思うのは、なぜ「150年」なのかということです。「北海道と命名されてから」ということですが、この地には先住民族としてアイヌの人たちがいた。そのことを忘れてはなりません。

 私は高校の途中まで札幌で過…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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