死に際にジタバタしてもええよ がん患う医師の人生観

それぞれの最終楽章・足し算命(8)

海南病院緩和ケア医 大橋洋平さん

 2月19日の診察で、白血球の数が大きく減少していることが分かりました。毎日飲み続けている抗がん剤スーテントの副作用です。本来であればさらに1週間、服用を続ける予定でしたがいったん中止し、最低2週間休薬して服用を再開するか決めることになりました。足し算命684日のことでした。

 がん患者にとって治療は文字通り命綱です。治療できなければ、すぐに死なないとしても生きられる時間が少なくなるのは間違いないでしょう。がんになると、治療=生、治療しない=死と捉える人が圧倒的に多い。そこから「検査の数値を見れば薬が効かなくなっているのは分かるが、治療を中止するのはイヤ。だって治療を止めたら死んじゃうじゃないか」と絶叫する患者も出てきます。

 薬の副作用は苦しいし、命を縮めてしまう恐れもあります。私の場合は白血球がそれに当たります。白血球が減ると感染症にかかりやすくなり、かかった場合は治りにくくなります。がんは命を落とすほど悪化していないのに、感染症で命を落とす患者さんも診てきました。今ならコロナも大敵で、要注意です。だから今回の治療中断には私も納得しています。

 ではこの先、完全に治療が不可…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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