死んだ敵兵が「宝の山」 手紙を読み込み投降促すビラ

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 草原で強烈な臭いを放つ死体でさえも、彼らにとっては「宝の山」だった。

 1939年、日本の傀儡(かいらい)国家の満州国とモンゴルの国境地帯で、日本とソ連の両軍がぶつかったノモンハン事件。日本の関東軍がつくった「戦場情報隊」は、最前線に出て、敵の情報を取ってくるのが任務だった。

 死んだ敵兵の懐を探り、地図や書類を抜き取る。あるいは、敵の見張り役を拉致して尋問にかける。

 「だからとにかく1人でも、死体でもいいし、俘虜(ふりょ=捕虜)でもいいし、とにかく敵の兵隊を捕まえなければ敵情がわからないんでね」

 隊を率いた特務機関員の入村松一(にゅうむら・ひさかず)は戦後、アメリカ人歴史家、故アルビン・クックス博士のインタビューに答えている。隊員は、満州に暮らすロシア人やモンゴル人も含めた65人。「極秘」とされた組織をつまびらかに説明した。

 部隊にはもう一つ、重大な任務があった。敵の将兵へのプロパガンダや情報工作だったという。その一環として、最前線で敵に、投降を促すビラをまいた。

 入村らはふだんからソ連の文献を読み込み、どんな言葉がロシア人の心に響くかを研究していたと語る。敵兵が肌身離さず持っていた家族との手紙も、その分析の対象だった。

 「死体から手紙、奥さんや家から来た手紙を全部読んだんです。それはロシア人を使って読みました」

日ソの捕虜を交換する際、仕組まれていた情報工作に元将校は気付きました。

■雪のようなビラ…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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