水俣病慰霊式、初の開催見送り 「命の大切さ重視して」

 水俣病が公式確認された5月1日に毎年営まれ、今年は延期していた水俣病犠牲者慰霊式について、患者・被害者団体や熊本県水俣市などでつくる実行委員会は21日、今年度の開催見送りを決めた。新型コロナウイルス感染拡大の防止が理由という。

 市によると、熊本地震が起きた2016年などに延期した例はあるが、開催見送りは1992年に慰霊式が始まって以来初めて。

 慰霊式は実行委と市の共催。緒方正実・実行委員長と高岡利治市長は6月、連名の文書で「秋ごろに規模を縮小して200人規模での開催は可能ではと考えた。しかしこの時期に(新型コロナが)収束しているか不明で感染のリスクがある」などとして今年度の開催を見送る案を各委員に通知し、賛否を尋ねた。

 この日の実行委で事務局は、委員17人のうち見送りに賛成は10人で、「来年度以降も新型コロナの影響が続くことも考えられるため、今年度縮小して行うべきだ」などとして反対が5人だったと報告。出席者から「水俣病、環境問題を二度と起こさない決意の場とする慰霊式は、少人数でもやる方向で議論を」などとする意見があった。出席した委員ら13人が投票し、8人が見送り案を選んだ。

 緒方委員長は終了後の取材に、「水俣病を経験した街だからこそ、命の大切さを重視してコロナウイルスの感染拡大につながるきっかけはすべて取りやめなければ。見送りは初めてのことなので委員長を務めた私の心中で重たさを感じた」と述べた。(奥正光)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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