求む! 同調圧力に屈しない「変人」 人口減の地方で高専生が挑む

いま子どもたちは 高専生の力@岩手(1)

 小麦粉と砂糖の甘い香りが漂う中、ひっきりなしに動く機械の作業音が響いていた。

 岩手県一関市に総本店がある、創業120年の菓子店「松栄堂」。9月中旬、その工場に白衣にマスク姿の若者たち約20人が訪れた。どら焼きや団子が作られていく過程を熱心に見つめる。

起業家精神を学ぶ授業 地元企業と共に

 起業に関心のある学生向けに、今年度から国立一関工業高等専門学校(一関高専)が市などと共同で始めた「アントレプレナーシップ」(起業家精神)の授業の一環。1~4年の学生たちは、酒蔵やIT会社など、市内の7企業を3日かけて見学したあと、グループに分かれて各企業の課題について話し合う。年末までに、課題解決のための新事業を発表する。

 松栄堂社長の小野寺宏眞(ひろまさ)さん(40)は、学生たちに向けて地域でビジネスをする意義を話し、「仕事とは、付加価値の再分配だ」と力を込めた。農家から規格外の作物について相談を受けて、長期保存がきくアイスクリームにして売ることを思いつき、フードロスの削減につなげた経験を明かした。学生からは「人口減少の時代に海外展開をどう考えているのか」などと多くの質問が出た。

 小野寺さんに「東京で就職したのに、なぜ地元にUターンして家業を継ごうと思ったのか」と質問したのは、3年生の館(たて)和洋さん(18)。小野寺さんは「東京に出たからこそ、一関の良さがわかった。地場の素材を使い、土地に根ざした文化や風習を受け継ぎ、発信することに意義を見いだせた」と答えた。「今まで多くの見学を受け入れてきたが、こんなに熱心に質問されたのは初めて」

 企業訪問を終え、館さんは1年生の沼田登志也さんと内藤優実さんとともに、特別養護老人ホームを担当することになった。館さんは「今年移転新築したばかりの施設。いろいろ挑戦できるポテンシャルを感じた」。

 館さんたちは、施設内に工事中のカフェがあることに着目した。沼田さんが「地域に寄り添う形にしよう」とコンセプトを語ると、内藤さんは「松栄堂のアイスクリームを扱ってみたら」と提案。館さんは「色々なアイデアが出てきて頼もしい」と笑顔をみせた。

起業家、県の「政策メンター」… いくつもの肩書がある高専生 

 一関高専生が地域の課題解決に取り組む――。その道筋を切りひらいたのが、専攻科1年の上野裕太郎さん(20)だ。

学生発の取り組みに力を入れる一関高専。その姿に密着しました。4回シリーズです。

 専攻は化学で、陸上養殖のシ…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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