泣き叫ぶ妻の横で謝罪なき顧問 自死したバレー部員の父が語る防止策

 バレーボール部員だった岩手県立高校3年の新谷翼さんが、自宅で自死したのは2018年7月だった。

 「背は一番でかいのに、プレーは一番下手だな」

 「そんなんだから幼稚園児だ」

 元顧問(今年6月に懲戒免職)は、そんな人格否定的な言葉を日常的に投げつけていた。

 「ミスをしたら一番怒られ、必要ないと、使えないと言われた」

 「バレーボールが嫌になりました」

 翼さんの遺書にはそうしたことが書かれていた。

 「顧問を務める男性教諭の叱責(しっせき)や暴言が、死にたいと思う気持ちを強める一因になった」

 岩手県教育委員会が設けた第三者委員会が、20年7月にまとめた調査報告書は、そう結論づけた。

 大阪・桜宮高の男子バスケットボール部主将が、顧問から受けた暴力などを理由に12年12月に自死し、スポーツ界が暴力撲滅に努力を始めている中での出来事だった。

 今も指導者の暴力が次々と明らかになるスポーツ界の現状を、どう思うのか。父親の新谷聡さんが取材に応じてくれた。

 ――桜宮高の事件から10年、翼さんの出来事から約4年半が経ちます。日本のスポーツ指導の状況をどう思われますか。

 私もかつてサッカーをやっていて、スパイクで蹴られ、「水を飲むな」という指導を受けた世代です。水分補給はともかく、昔のノリで教えている指導者がまだいて、体育会系の声の大きい指導者がのさばる傾向にまだある、と感じます。

 一般的に、教員になる人は22歳で大学を卒業して、新入社員と同じ立場なのに「先生」と呼ばれます。忙しくて、しっかりニュースも見られず、世の中がどうなっているかをよくわからない生活を送っているかもしれません。そんな中、スポーツの指導者研修も受けずに部活動の顧問になり、根拠もエビデンスもない指導でも、自分が受けてきたことと同じ指導をする「負の連鎖」があると感じます。

 そもそも部活動で明らかになっている体罰、暴力を、私は生徒に対する虐待だと思います。なのに、発覚すると「行き過ぎた指導」と言いますね。そこが既におかしいと思います。

日本スポーツ協会などが採択した暴力行為根絶宣言は、暴力行為を「言葉や態度による人格の否定、脅迫、威圧、いじめや嫌がらせ」と定義している。

 ――翼さんが入っていた部の元顧問も、自分の指導が暴力的だという意識はなかったのでしょうか。

 自分がやっていた指導がまず…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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