泥だらけの店内「廃業も…」九州南部大雨、被害相次ぐ

 鹿児島、熊本、宮崎の3県に「大雨特別警報」が出た。10日、鹿児島県薩摩川内市などで冠水が広がり、昨夏に大きな被害を受けたばかりの熊本県人吉市は再び不安に包まれた。鉄道や道路などの交通網にも乱れが出た。梅雨前線は停滞しており、11日も引き続き警戒が求められている。

着の身着のまま避難、住宅街は冠水

 鹿児島市の北、人口約9万人の鹿児島県薩摩川内市では、市内を流れる川内川の支流があふれ、住宅の浸水や道路の冠水、土砂崩れが相次いだ。

 10日午前5時半に大雨特別警報が出され、警戒レベル5の「緊急安全確保」が発表された。市内では「安全な場所で身を守る行動をとって下さい」という防災無線が流れた。

 JR川内駅近くに住む会社員の赤瀬祐希さん(40)は、川から水があふれ、自宅が床上までつかったという。「本当にあっという間だった」と振り返った。

 市は午後2時までに79カ所に避難所を開設し、一時、469世帯の916人が避難した。

 川内駅から約4キロ離れたスポーツ施設「サンアリーナせんだい」には、毛布や着替えなどを抱えた市民が次々にやって来た。大雨情報を流すテレビを不安そうに見つめる市民も多かった。

 川の水が自宅近くまで逆流してきたという男性(71)は「着の身着のままなので食べ物もない。腰を痛めている妻の容体が心配」。別の男性(46)によると、川内川はあと30センチほどであふれそうなところが何カ所かあったという。「この辺は台風も来る。みんないつも早めに避難するようにしている」と話した。

 雨が落ち着いてきた昼すぎ。川内駅から約200メートルの住宅街の中にあるコインランドリーのガラス扉には、高さ約70センチのところまで水につかった跡が残っていた。中の洗濯機2台は壁に倒れかかるように傾き、床は泥だらけ。隣の公園には流れてきたとみられるポリ袋が散らばり、道路沿いの植木鉢はひっくり返っていた。

 コインランドリーの経営者の女性(60)は「まだ雨が続く予報だから、片付けに取りかかれるのは晴れてからですね」とため息まじりにつぶやいた。経営して18年。10年以上前にも浸水したことがあったが、そのときは20センチほどまでだったという。女性は「『何十年に1度』というような大雨が、すぐまたあるかもしれない。廃業も考えています」と漏らした。

 また、さつま町によると午後7時現在、山間部の大俣地区の14世帯34人が、往来する道路の陥没や土砂崩れにより孤立状態になっている。同地区では一時停電となり、断水も続いているという。(具志堅直、山田佳奈、奥村智司)

昨年の豪雨で21人が亡くなった人吉市は…

 昨年7月の記録的豪雨で球磨(くま)川が氾濫(はんらん)し、21人が亡くなった熊本県人吉市には10日午前6時10分、再び大雨特別警報が出された。直後の午前6時15分、市は全域の1万5308世帯3万1223人を対象に「緊急安全確保」を発表。防災無線やエリアメール、防災ラジオなどで直ちに安全を確保するよう住民に求めた。

 昨夏に中心市街地で営む美容院が水没した田代智三さん(59)は、この日の夜明けごろから自宅でテレビなどを見て情報を収集した。自宅は昨夏も被災を免れた場所にある。「雨の降り方が昨年よりひどい」と感じ、再建した美容院の被災を懸念したが、報じられる球磨川の水位が豪雨の時より低く、自宅に待機したという。

 球磨川から約1キロの場所に住む70代の男性も、テレビで防災情報を確認しながら自宅にいた。早朝は外出先にいて、午前5時半ごろに球磨川を渡った際には「氾濫するほどの水かさではない」と感じたという。ただ、「あと数日雨が続けば、水量が増してまた氾濫するかもしれない」と不安げに話した。

 市によると、市内12カ所の…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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