生活保護引き下げ訴訟、原告側の請求を退ける 神戸地裁判決

岩本修弥、小野大輔

 国が生活保護基準額を引き下げたのは生存権を保障する憲法25条に違反するとして、兵庫県内の受給者24人が減額の取り消しを求めた訴訟の判決が16日、神戸地裁であった。小池明善裁判長は、原告側の請求を退けた。

 原告弁護団によると、同様の訴訟は全国29地裁で起こされ、地裁判決は7件目。名古屋、札幌、福岡、京都、金沢の5地裁判決は原告側の訴えを退けたが、今年2月の大阪地裁判決は減額決定を取り消しており、判断が分かれている。

 国は「2008~11年に4・78%の物価下落があった」とする厚労省の算定をもとに13~15年、生活保護費のうち、衣食や光熱費など日常生活に必要な費用にあたる「生活扶助」の基準額を3回に分けて引き下げた。総額670億円、平均の削減幅は6・5%で、いずれも戦後最大だった。

 訴訟の争点は、こうした引き下げが、厚生労働相の裁量の範囲内といえるかどうかだった。

 原告側は、原油価格の高騰による物価が一時的に上がっていた08年を起点としたのは「恣意(しい)的」と指摘。引き下げ後の基準額は、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障した憲法25条や「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」と定めた生活保護法に違反する水準であり、裁量権の逸脱にあたると主張した。

 一方、被告側は、同年9月のリーマン・ショックで物価が下落したのに、基準額は据え置かれていたと反論。基準額の引き下げはその是正であり、裁量権の範囲内だとし、原告側の請求を退けるよう求めていた。(岩本修弥、小野大輔)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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