直木賞どうなる?記者たちが語る「やはり受賞は…」 きょう選考会(西日本新聞)

 第161回芥川、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が17日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれる。芥川賞は福岡市出身の古川真人さん(30)の「ラッコの家」など5作、直木賞は既に山本周五郎賞を受賞している朝倉かすみさん(58)の「平場の月」など6作が候補入り。直木賞は初めて候補者全員が女性の顔ぶれとなった。令和最初の両賞選考会を文化部記者が展望した。

―女性が占めた今回の直木賞候補。まず2度目となる窪美澄さんの作品から。

 A 1960年代の出版社で出会う女性3人の友情と、3世代に渡る女性の社会進出の努力と苦難を描くが、いい話すぎる。

 B でも、「#KuToo」や「#MeToo」などフェミニズムの風潮が再び高まる昨今、タイムリーではあった。

 C 「結婚した女性は専業主婦が当たり前」でそれに抗する「新しい時代の熱気」があったのは、もはや祖母世代。聞き手を孫娘にした設定が成功した。

 D 彼女たちの苦悩や喜びを孫世代がラストで受け継ぎ、余韻を残した。

 E モデル小説で丹念に調査しているが、逆に努力の跡が透けて見えた。

 F 前候補作「じっと手を見る」の方が窪さんの持ち味は出ていた。

 G ノンフィクションで読みたい題材だった。

―山本周五郎賞を受賞した朝倉かすみさんは。

 A 美しい恋愛小説。青砥と須藤の中年男女が社会の底辺で生きていることが恋愛をより純粋にしている。女性の死が冒頭で示され、理由の解明を物語のエンジンにする構成も素晴らしい。ただ、短文を連ねたハードボイルド風の文体は好き嫌いが分かれるか。

 B 2人の思いが通じ合っていても、老い先短い将来、世間体などで距離は縮まない。結末が冒頭で分かってるのにハラハラした。「いっちゃあかんやつ」という言葉は、どんな思いで口にしたのか。想像するだけで涙が出そう。

 D ウイットに富んだ言い回し、適度にそぎ落とされた会話などは元同級生という関係性を際立たせていた。行間に互いの情感が充満している。

 H 老い、病、金銭的な不安など現代の「平場」の「月並み」な人生に読者がいとおしさを覚える描写力に魅了された。

 E 50代の男女、元同級生。偶然の再会、病…。凡庸で直球な設定なのに、ページが進むごとに思いがけない場所に連れていかれる。中高生時代の人間関係から逃れられない行き場のなさや、デフレで不景気な今の日本という時代性をうまく取り込んでもいる。

 F 「トリニティ」など女性の立場から女性らしい葛藤を描く作品よりも、オーソドックスに男女を丁寧に描く本作の方が逆に新鮮だった。青砥が須藤を評した言葉を借りれば、この小説自体が「太い」。


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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