神宮外苑再開発「環境アセス手続きに不備」、国際学会日本支部が指摘

 神宮球場秩父宮ラグビー場の建て替えを含む東京都心の明治神宮外苑地区の再開発事業をめぐり、環境影響評価(アセスメント)の専門家らでつくる国際影響評価学会(IAIA)日本支部が15日、同事業の環境アセス手続きに不備があると指摘した。

 IAIA元会長で日本支部代表の原科幸彦・千葉商科大学長らが同日に記者会見した。IAIAは環境アセスの中心学会で、120以上の国・地域で構成される。国連にアセス分野の代表組織と認められているという。

 同事業は、都心の神宮外苑の17・5ヘクタールを再開発し、球場やラグビー場を建て替えるほかに超高層ビル2棟なども新築する。837本を植樹する一方、700本以上の高木を伐採する計画に対して環境破壊や景観悪化への懸念が広がっている。

 同事業の環境アセスは、事業者が作った評価書案を都が1月に受理・公示している。しかし、その後も文化遺産の専門家らでつくる日本イコモス国内委員会が「(外苑の代表的景観で、生育への悪影響が懸念されている)イチョウ並木の調査が不十分」「記載すべき植生図がない」など58項目の不備を指摘し、都の環境影響評価審議会が審議の上で「評価予測に影響はない」と結論づける動きがあった。

 これについて原科氏らは、国連教育科学文化機関ユネスコ)の諮問機関である日本イコモスの指摘に対し、事業者の一方的な説明だけで科学的議論が不十分などと指摘。審議会で日本イコモスと事業者側の公開議論を開いて「不備」に関する疑義の解明が必要とし、それまでの工事中止を都が事業者に求めるべきだとした。

 また原科氏らは、約100年前に国民の寄付などで外苑が造られた歴史的価値や、森が持つ生物多様性などの評価が「適切でない」とし、アセスの理念に反していると指摘した。

 会見で原科氏は、評価書に疑義が生じる中で着工届を受理したとして都の姿勢は「世界標準からかけ離れている」と批判し、「虚偽報告が出たらブレーキをかけるのは知事で、都条例にも規定がある。責任が問われる」と語った。

 都の担当者は「評価書に関わる事業段階の環境影響評価手続きは終了している。現在は事後調査手続きを進めていて、今後も法令にのっとり、適正に手続きを進めていく」と話した。(土舘聡一)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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