神宮外苑再開発の環境アセス、審議会「虚偽といえぬ」 研究者は批判

土舘聡一

 明治神宮外苑地区の再開発計画環境影響評価(アセスメント)の評価書に「誤りが多数ある」と指摘された問題で、都環境影響評価審議会(柳憲一郎会長)は18日、「虚偽といえるまでの誤りはない」と結論づけた。指摘していた研究者側は「許容できない」と反発している。

 指摘していたのは、文化遺産保存の専門家らでつくる日本イコモス国内委員会。評価書は、審議会の審議を経て1月に都に提出・受理されたが、日本イコモスは、外苑の代表的景観となっているイチョウ並木の調査地点が「1カ所で不十分」としたり、「記載するべき植生図がない」と指摘したりし、58項目の不備を挙げていた。

 これに対し、評価書を作成した事業者側は、代表の三井不動産が、58項目のうち半数は「事実と異なる」と反論し、ほかの半数は「考え方や解釈の違い」と説明。そのうえで、「評価書の内容は正当なもの」と主張した。

 審議会では、委員から、評価書作成のための樹木調査や生態系維持・復元などに関する見解について「客観的な説明が足りない」などと指摘があった。事業者側は「今後の調査報告で詳細に記載し、改善する」と説明した。

 審議会は、評価書について「誤解が生じやすい表記があるが『虚偽』と呼べるまでの誤りはない。評価予測に大きな影響はない」とした。事業者に、住民らへの真摯(しんし)な対応も求めた。

 審議会の結論について、日本イコモスの石川幹子理事らは18日、評価書の調査方法が事業者のマニュアルに沿っておらず、「答えが不十分」などと主張。石川理事は「イコモスとしての科学的な指摘。審議会が虚偽はなかったと、科学を否定するのは許容できない」と述べ、今後の対応を検討するとした。

 18日の審議会では、今は「検討」とされている秩父宮ラグビー場付近のイチョウ19本の移植について、事業者側が、「2027年ごろまでに可否を示す」と回答。聖徳記念絵画館前のイチョウ並木の活力度調査については「6月から工事完了まで毎年実施して報告する」とした。また、神宮球場北側にある建国記念文庫の森の保全については、樹木の移植計画を33年9月ごろに示し、移植後の整備状況について36年12月ごろに報告するとした。(土舘聡一)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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