給食向け野菜・牛乳の生産者に打撃 新型コロナ(産経新聞)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて全国の小中学校などで休校が続く中、給食向けの野菜や牛乳などを生産する農家の危機感が高まっている。学校再開後に安定供給するには生産量を減らすわけにいかないが、急に給食以外の販路を開拓することもできない。特に牛乳は、牛がつくる生乳が6月に生産のピークを迎えるため大量廃棄の瀬戸際にあり、農林水産省は「いつもより多めに購入してほしい」と呼びかける。(橋本昌宗、佐藤侑希)

■販売は半分以下

 「一言でいえば、危機的状態だ」。東京都江戸川区で小松菜を専門で栽培する「門倉農園」の門倉周史(しゅうじ)代表(36)は現在の状況をこう語る。

 江戸時代、8代将軍の徳川吉宗がタカ狩りで現在の江戸川区小松川付近を訪れた際に気に入り、地名からとって「小松菜」と名付けたとも伝わり、区内では生産農家が多い。

 小松菜農家として6代目という門倉さんも毎月約3・5トンを生産。うち大半の約3トンを地元の学校給食、残る約0・5トンをブランド野菜として百貨店などに出荷していた。しかし3月上旬以降、学校が一斉に休校になると給食が停止になり、さらに緊急事態宣言により百貨店に休業要請が出されたため小松菜は行き場を失い、大半を廃棄せざるを得なかった。

 区は、門倉さんのように苦境に立った農家のため、区役所前などで生産者による直売会を3月中に計8回開催。区の栄養士の協力やインターネットを通じて販売したが、売れたのは生産量の半分以下という。

 小松菜は通年で栽培できるが、種をまいてから収穫・出荷まで約2カ月かかる。作物の大きさなど規格が合わないため、スーパーなど一般への流通は難しい。

 門倉さんは「急に学校が再開されたときに備えて生産量を落とせない。先行きは見えないが、いつも通りつくり続けるしかない」と苦悩を深めている。

■余る牛乳

 パンや米、肉や魚など給食向けの食材は多大な影響を受けているが、特に先行きが不安視されているのが、給食に欠かせない牛乳を筆頭とする乳製品だ。

 農水省によると、牛乳や生クリームの原料となる生乳の生産量は6月ごろがピーク。その後は夏の暑さによるストレスで生産量が減少していくという。乳牛は乳を絞らなければ乳房炎を患う可能性もあり、消費にかかわらず、生乳は毎日生産され続ける。

 乳業メーカーや生産者団体は、保存ができるチーズやバターといった加工品に回す量を増やしているが、国内の加工設備は限られており、限界がある。緊急事態宣言を受けて百貨店や飲食店、菓子店なども休業する店舗が多く、このまま消費が細り続ければ、大量廃棄せざるを得ない恐れも出てきている。

 スーパーで急遽(きゅうきょ)、給食向け牛乳を販売するなど協力する動きは広がっている。ただ、消費量は追い付いていない。全国酪農協会の担当者は「自粛がいつまで続くのか想定できない中でも生乳は生産され続ける。少しでも家庭で消費してもらうしかない」と話す。

 生産量のピークを前に、農水省は今月21日、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を普段より1、2個多めに購入してもらうよう異例の要請を行った。担当者は「この難局を乗り切るために、少しでも買ってもらうことが酪農家への応援になる」と強調した。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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