胃潰瘍で死亡し労災認定、遺族提訴 代理人「企業側の責任を明確に」

山本逸生

 富山市の男性(当時62)が2021年、出血性胃潰瘍(かいよう)を発症して死亡したのは長時間労働による過労が原因として、遺族が6日、男性が勤務していた東証プライム上場の北陸電気工事(富山市)に計約7300万円の損害賠償を求める訴訟を富山地裁に起こした。男性は今年5月、消化器系の病気としては異例の労災認定を受けた。

 訴状によると、男性は19年8月の定年後も再雇用され、発症当時、放送局の新局舎建設事業で、電気設備工事の現場責任者として働いていた。21年10月以降、工事日程が過密になって長時間労働が目立つようになり、同12月に自宅で倒れて死亡した。

 労災と認めた富山労働基準監督署は、死亡前直近1カ月の時間外労働を122時間だったと認定した。遺族側は、同社が男性に対する安全配慮義務などを怠り、「強い心身の負荷が生じることが明らかな過重な業務に従事させたことで死亡した」と訴える。

 提訴を受け、北陸電気工事は朝日新聞の取材に「訴状が届いていないためコメントできない」とした。ホームページでは5日付で見解を公表し、「労災認定の事実を大変重く受け止める。同様のことを起こさないよう今後も健康経営の推進に努める」とした。

 過労による労災を巡っては、脳や心臓の病気と精神障害以外は国の認定基準がなく、労働者側が申請をあきらめる事例があるという。遺族側代理人で過労死弁護団全国連絡会議代表幹事の松丸正弁護士は提訴後の記者会見で、「裁判所が企業側の責任を明確にさせることが、労働者全体にとって大きな前進になる」と話した。(山本逸生)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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