自転車の点検はしないが、保険には…加入急増、背景に事故の高額賠償

 コロナ禍でニーズが高まる自転車について、大半の人が点検や整備をする習慣がないとの調査結果が公表された。自転車が絡む事故は近年増えており、万が一に備える保険への加入は急伸。ただ、全国の自治体では加入率に地域差があるのが実情だ。(柴田秀並、酒本友紀子、伊藤嘉孝)

 東京都世田谷区の女性(42)は、点検不足の自転車で痛い目にあったことがある。

 休日、駅に向かっている時だった。立ちこぎをしようと踏み込んだ瞬間。チェーンが外れ、かかとを地面に打ちつけた。足首の靱帯(じんたい)を損傷し、しばらく靴を履けず、治るのに半年かかった。自転車は10年間使っていたが、手入れといえば、きしむときに油をさしていた程度で、店で点検したことはなかった。「怖くて未点検の自転車には乗れない」と今は思う。

 自転車が絡む事故は近年増えている。警察庁のデータによると、2020年の単独事故は前年より1割多い2958件。整備不良が関係する事故も相次ぐ。

 それでも点検、整備への世間の意識は低い。au損害保険が今年6、7月に自転車利用者1千人に聞き、8月に公表したアンケートによると、乗車前点検について「ほとんどしない」「全くしない」と回答したのが合わせて86・9%。故障や不具合が原因の事故に遭ったり、遭いそうになったりした人も19・5%いた。店での点検は「していない」が60・9%だった。

 点検意識の低さと裏腹に、自転車のニーズはコロナ禍で高まっている。

 同社が昨夏、自転車通勤をする500人に尋ねた調査では、感染流行後に始めた人が23%で、ほとんどが「公共交通機関での通勤を避けるため」。流行後に会社から推奨された人も3割に上った。

 業界は活況で、自転車店「サイクルベースあさひ」を全国展開するあさひ(大阪市)は、21年2月期決算の純利益が過去最高で、前年同期比84・4%増。「密」を避けるための公共交通機関からの「乗り換え」や、「巣ごもりによる運動不足の解消ニーズ」(担当者)が後押ししたという。シェア自転車を東京都心などで展開するドコモ・バイクシェアの会員数は6月時点で、前年比4割増の約110万人となった。

保険加入が急伸、でも地域差も

 こうした中、急伸するのが「自転車保険」だ。大手の損保ジャパンでは21年の販売が8月末時点で、流行前(19年)の同時期の約2倍に。背景には、近年1億円などの高額賠償事故が相次ぎ、リスクへの理解が広がったことに加え、加入を促す国や自治体の取り組みがあるようだ。

 高額賠償事故を機に、15年に兵庫県が加入義務化の条例を設け、全国に波及。19年に国土交通省が条例のひな型をつくったことも後押しし、今年4月時点、義務づけ条例が22都府県、努力義務の条例が10道県で制定されている。

 au損保の今年1月の調査では、加入率が最も高い京都府(73・1%)には条例があり、最低の島根県(35・1%)にはなかった。事故のリスクは地域に関わらずあり、自転車側が無保険で賠償能力も乏しければ、被害者が守られない。そうならぬよう同省は、地域差を是正すべく未制定の自治体への働きかけや、販売店への協力要請を強める方針で、ある省関係者は「むき出しの格好で乗り、スピードも出るのに、保険や点検の意識がこれまで低かったのがそもそもおかしかった」と話す。

ほかの保険もチェックを

 自転車の保険とは具体的には…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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