英語嫌いの校長が36歳で痛感した必要性 文系・理系の枠を超えて

 入試シーズンが始まります。コロナ下で頑張る受験生たちへ、校長からのメッセージをお届けします。

校長から受験生へ:ドルトン東京学園中・高等部校長 荒木貴之さん

 開校から3年、4月には高校生が誕生します。高校でも新たな挑戦をしたいと思っています。文部科学省が掲げる、高校の普通科改革や学びの個別最適化を先取りする教育です。文系・理系クラスは作らず、生徒自身に、それぞれ必要と思う授業を選択し、3年間のカリキュラムを、自分で組み立ててもらいます。

 例えば、文系に進む生徒であっても数Ⅲが取れるようにします。よくあるのが、高1の夏から1年間留学して高2の夏に戻ると、その1年間の授業がスッポリ抜けてしまう。そうしたことがないよう、高2でも高3でも、高1の数Ⅰ・数Aなどの授業が選べる設計にするつもりです。また、河合塾が経営に関わる学校なので、8、9時間目に、塾講師の国数英の授業を希望者向けに設けます。

 新しい校舎「STEAM棟」(STEAM=科学、技術、工学、教養・アート、数学)も完成します。次の高1が受験する大学入学共通テストから「情報Ⅰ」が新設されますが、プログラミングはもちろん、情報デザインや統計も早くから教え、アートとも融合させ、ものづくりを通して学べる環境をつくります。これは、文系・理系問わず必須の学びです。

 私は高校時代、国立文系コースにいました。でも好きな教科は理科で、いつも地学は高得点だった。共通1次は社会で失敗し、高3の2月に理転して東京学芸大の地学科へ進み、理科教員になりました。

 英語も嫌いでした。本気で英語の必要性を感じて勉強したのは、東京都北区教育委員会の指導主事として、中学生20人を米国カリフォルニアに連れて行って、現地の市議会でスピーチしてからです。実は私は被爆2世なんですが、英語でお互いの国のことを伝えあい知ってもらう大切さを痛感しました。36歳でした。

 もう文系とか理系とか言う時代ではありません。子ども自身が、その時その時に没頭できる学びや体験に注力し、その中で必要な学びを吸収して欲しい。

 我が校の教育の土台である「ドルトンプラン」は、「自由」と「協働」を柱にしています。東南アジアの国々とパームヤシの研究をしている生徒たちもいれば、鳥取市の私立中学の生徒と電子図書館でビブリオバトルをする生徒たち、企業と連携して学ぶ生徒たちもいます。校内外を問わず様々な相手とともに課題解決する力もつけて欲しい。

 進学も今はいろんな道があります。学び直しもできます。アカデミックフリーダム(学びの自由)。受験生のみなさんは、どの学校に進学したとしても、自分の好きなことが学べる環境を自分でつくりあげていってください。(聞き手=編集委員・宮坂麻子

     ◇

〈あらき・たかゆき〉1964年生まれ。東北大大学院情報科学研究科修了。都内の公立中教諭、立命館小学校副校長、河合塾新教育事業推進室主席研究員、武蔵野大教授などを経て2020年春から現職。21年度から情報経営イノベーション専門職大学教授も務める。

★ドルトン東京学園中等部・高等部

・所在地:東京都調布市入間町

・創立:2019年

・生徒数:中学340人(来年度、1期生が高1に)

・ドルトンプランの教育理念「自由」と「協働」を実践する学校

・目的と目標を意識し、学習手段の選択やスケジュール管理などの学びの設計を生徒自身で行う

・少人数の習熟度別英語学習、国内外の英語研修制度あり、企業などとタイアップしたキャリア教育

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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