親子で食事まで2年 ひきこもりの子に「お供え」やめた

 もう何年も姿を見せない息子。「それが先日、自ら部屋を出て、親子で食事をしたんです」

 60代の母親が静かに話し始めると、長テーブルを囲む他の父母たちが目を潤ませた。

 山口県宇部市のNPO「ふらっとコミュニティ」が毎月開く教室「家族心理教育実践編」。ひきこもりの子がいる父母ら10人ほどが集まり、子どもの心理や日頃の接し方を学んでいる。

 この日報告をした母親は、2年前から教室に通い始めた。息子の部屋のドアの前に食事を置く「お供え」をやめ、「ごはんできたよ」とさりげなく声をかける。部屋から出ている気配に気付いても、普段通りに振る舞う。小遣いをきちんと渡す――。教室で学んだ対応の仕方を一つひとつ実践するうちに、少しずつ息子の様子が変わってきたという。

 NPOの理事長で山口大大学院教授(保健学)の山根俊恵さんは「外に出そう、就労させようと焦るのは逆効果。でも、何もしないでいるとあっという間に10年が経ってしまう。親たちが変わることで必ず家族関係は変化する」と話す。

拡大する子どものひきこもりに悩む親たちの話に耳を傾ける山根俊恵・山口大教授=山口県宇部市、藤脇正真撮影

 山根さんは精神科の元看護師。「行政の窓口や保健所に相談しても、話を聞いて終わり」「精神科の医師に相談したら、本人を連れてこいと言われた」――。ひきこもりの家族に共通する悩みを知り、精神障害者支援の場として運営していたNPOで2015年から、ひきこもりの当事者や家族の支援を本格的に始めた。

「引き出し屋」と呼ばれる業者の実態をルポする連載。悩む当事者や家族に出口はないのか――。4回目は、「引き出し屋」のやり方とは根本から異なるNPOの取り組みや、ひきこもり状態から抜け出した男性の体験を報告する。

 親たちはまず、6回の基礎講習…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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